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 3月17日の独フォルクスワーゲン(VW)の決算会見は、新型コロナウイルスの感染を防ぐために、オンラインのみで開催された。

 冒頭にヘルベルト・ディース社長はやや緊張した面持ちで、この問題に触れた。「従業員とその家族の健康と安全を確保することが最優先事項だ。販売の急速な悪化と部品調達の不確実性の高まりから、工場の生産を停止する」

 既に欧州では移動制限や外出制限などが発令され、工場への出勤や販売店の営業ができない国や地域が増えている。同社は欧州のほぼ全ての工場を19日から順次、停止していく。停止期間は2週間ほどになる。

 「今の状況では信頼できる見通しを作ることはできない」として、2020年12月の業績見通しを示さなかった。欧州を代表する製造業であるVWと同じように、欧州ではあらゆる企業が新型コロナの感染拡大で五里霧中の状況に陥っている。

フォルクスワーゲンは2週間ほど、欧州の工場を休止する。(写真=AP/アフロ)

 独コンサルティング会社、ローランドベルガーは12日、新型コロナの世界経済への分析リポートを発表。「欧州が特に深刻なダメージを受ける」と指摘する。世界不況になった場合における2020年の国内総生産(GDP)は、中国が前年比2.5%増、米国が同1.2%減、欧州が同2.5%減になると試算する。

 さらに厳しい見方もある。独紙フランクフルター・アルゲマイネの報道によると、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は、欧州連合(EU)首脳に対し新型コロナ対策が3カ月続くと20年の欧州のGDPが前年に比べ5%縮小するという予測は現実的だと話した。ECBは18日、新たに7500億ユーロ(約90兆円)の枠を設け、20年末までに国債や社債などの資産購入で資金供給することを決めた。

 金融市場も景気後退の足音に敏感に反応している。英株価指数FTSEの18日終値は1月末に比べ3割下落した。欧州の主要600社でつくる株価指数「ストックス600」の18日終値は、1月末に比べ32%下落している。航空株やエネルギー株などの落ち込みが大きい。

 世界の大きな経済圏を米国と中国、欧州に分けた場合、欧州が最も他の地域への依存度が大きい経済モデルになっている。ローランドベルガーの分析では、欧州は中国から電子機器などを年間4070億ドル(約44兆円)輸入し、米国に自動車などを4750ドル輸出している。新型コロナの感染拡大で国際的なサプライチェーンが分断しつつあるため、欧州が最も大きな影響を受ける。