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 欧州連合(EU)が新型コロナウイルス対策でちぐはぐな対応を繰り広げている。EU各国首脳は17日、域外から外国人の入国を30日間、原則禁止することで合意した。これを受け、各国政府が入国禁止の措置を講じる。EUを離脱した英国やEU未加盟のノルウェーやスイスなども対象となる。EU各国の国民や、長期滞在者、医療従事者の移動は認められる。

フランス政府は17日から許可のない外出を制限。パリの代表的な観光地であるエッフェル塔周辺では警官の取り締まりも(写真:ロイター/アフロ)

 人々の自由な移動は、EUの理念と政策の根幹を成す。欧州ではEU加盟国を中心に26カ国が出入国審査を免除する「シェンゲン協定」に加盟し、パスポートをチェックすることなく移動できる点が欧州市民という意識を醸成してきた。これは域外の外国人についても利便性があり、一度シェンゲン協定内に入れば自由に移動できる。

 そのため、当初はイタリアで感染が拡大してもシェンゲン協定内の国境封鎖には消極的だった。11日にトランプ米大統領がEUの新型コロナ対策を「失敗」と批判し、欧州諸国からの渡航禁止を発表した際には、EU首脳は「一方的な行動ではなく協力が必要だ」と反論していた。

 しかし、同日以降も域内で感染者が急増。17日時点の感染者は、イタリアの3万1506人に続き、スペインの1万1178人やフランスの7730人など、各国で感染が拡大している。検査数の違いなどがあり単純な比較は難しいが、欧州には日本より感染者数が多い国は12カ国ある。欧州全域の新型コロナによる死者数は3000人を超え、今の勢いだと18日にも中国のそれを抜いてしまいそうだ。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は、「今や欧州がパンデミックの震源地だ」との認識を示している。

 17日に日本政府の専門家会議は、欧州からの帰国者や訪日者に対して14日間、自宅などの待機を要請すべきだとする要望書を厚生労働省に提出した。もはや欧州は理念をいったんは棚上げし、経済的な大損失を覚悟で全域や国境の封鎖に踏み切らざるを得ない状況に追い込まれた。 

仏マクロン大統領「戦争状態にある」

 欧州でイタリアの次に感染が拡大しているのがスペインだ。サンチェス首相は14日に非常事態を宣言。同日から買い物や出勤以外の外出を制限することを表明した。警官が外出監視のパトロールを始め、軍隊も感染防止の活動に出動するほか、国境を事実上封鎖している。

 EUの盟主であるドイツも、国境封鎖に踏み切った。16日に、国境を接するフランス、オーストリア、スイス、ルクセンブルク、デンマークとの往来は、物資と通勤者だけに制限した。国内の飲食店は午後6時までの営業に規制され、バーやレジャー施設なども閉鎖された。メルケル首相は記者会見で「みんながルールを守るほど、この局面を早く切り抜けられる」と語った。

 フランスのマクロン大統領は16日に会見を開き、「我々は(ウイルスとの)戦争状態にある」と厳しい認識を国民に示した。17日から15日間、買い物や通勤を除き、外出を制限し、違反者は処罰する。街中では警官が外出を取り締まっている。既にポーランドやデンマーク、チェコなどは外国人の入国を禁止している。