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イタリア政府は3月11日、新型コロナウイルスの感染者が1万2462人、死者は827人になったと発表した。致死率は6.6%で他国より突出して高く、修羅場と見られた中国・武漢より高い。重症の感染者に医療現場が対応しきれず、医療崩壊が起きているようだ。

 3月10日朝からイタリアの街の空気は一変した。それまで新型コロナウイルスの感染者が増えていたものの、前週末まではイタリア人の受け止め方は様々だった。「新型コロナで正念場のイタリア、人口の約4分の1を『封鎖』」で書いたように、息抜きのために散歩やジョギング、公園に出かける人も多かった。

 だが、コンテ伊首相が9日夜に、10日から移動制限を北イタリアから全土に拡大すると発表。国民に外出を控えて自宅で過ごすように要請し、「国民全員が協力して、厳格な規制に対応してほしい。私たちにはもう時間がない」と訴えかけた。飲食店は営業時間が午前6時から午後6時に制限され、客も1メートル以上の間隔を保たなければならない。

 移動制限を打ち出した後は、街の人出が激減。道路や公園などがガラガラになった。ミラノ在住の日本人は、「出かけるのも気が引ける」と話す。スーパーマーケットは混乱を避けるために入場制限を実施しており、その外では列ができていた上に、1メートル以上の間隔を空けて並んでいた。

 社会的な混乱も起きている。イタリア政府の規制によって、刑務所の受刑者が面会を禁じられたことに怒り、イタリアの20カ所以上の刑務所で暴動が発生。AFP通信によると、北部の刑務所では受刑者が屋上を占拠して抗議活動をしたり、刑務所の外で受刑者の家族が激しく詰め寄ったりした。中部では受刑者が刑務所を占拠し、南部の刑務所では大規模な脱走が起きた。

スーパーマーケットが人数制限し、店の外で並ぶ人たちも1メートル以上の間隔を空けている(写真=ユニフォトプレス)

 移動制限を発令した10日以降も感染者と死者の増加に歯止めがかかっていない。11日の感染者は前日から2313人増え1万2462人。死者は同196人増え827人となった。特に注目されているのが、致死率の高さだ。イタリアの6.6%という致死率は、世界保健機関(WHO)がこれまでの報告をまとめた平均の3.4%より高く、最も修羅場と見られた中国・武漢より高い。その理由として2つが挙げられている。

 1つは、高齢者の多さだ。イタリアは平均寿命が男女共に80歳を超える長寿国であり、全人口に占める65歳以上の比率は23%を占める。新型コロナによる死者は持病を持つ高齢者が多いようだ。

 もう1つが、医療現場の混乱である。現地メディアや個人の情報発信を総合すると、北イタリアで感染者が急増している地域の病院では、医療従事者や医療器具が不足し、重症者の治療に手が回らない「医療崩壊」の状態にあるようだ。