2020年1月、ロシアのプーチン大統領と話し合う ドイツのメルケル首相(当時、左)。両国の経済は エネルギーを通じ切り離せない関係となっている。
2020年1月、ロシアのプーチン大統領と話し合う ドイツのメルケル首相(当時、左)。両国の経済は エネルギーを通じ切り離せない関係となっている。

 2月24日にロシアがウクライナに侵攻してから、欧州の日常生活にも大きな変化が表れている。

 ドイツでは自動車用燃料の価格高騰が止まらない。3月に入り、ガソリンとディーゼル燃料はそれぞれ1リットル当たり2.15ユーロ(約275円)を超えている。これは1年前の2倍近い価格だ。あるドイツ在住者は、「燃料が高いのでクルマ利用を控えている。今後も値上げの可能性があるので、早めに給油した」と話す。

 自動車燃料の価格高騰は物流コストの上昇につながり、食料品も値上がりしている。電力やガスは数カ月ごとの支払いが多いため、すぐには影響が出ていないが、小売価格の上昇は必至である。ドイツの2月の消費者物価指数(CPI、欧州連合基準)は前年同月比5.5%の上昇であり、この勢いがさらに加速しそうだ。

 ドイツだけでなく、ユーロ圏全体でも物価上昇が消費者の生活を苦しめている。2月のCPIは前年同月比5.8%の上昇で、統計上比較できる1997年以降で最大を更新した。その主因は、ロシアにエネルギーを依存してきたことだ。

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 欧州はこの数年、ロシアへのエネルギー依存を強めてきた。国際エネルギー機関(IEA)によると、欧州連合(EU)と英国のガス需要に占めるロシア産の割合は、2001年に26%だったが徐々にその割合を高め、19年には37%に達した。域内の天然ガスの生産量が落ち、欧州はその代替として地続きで比較的安価に調達できるロシア産に頼った。ドイツは輸入元の55%がロシアとみられ、欧州の中でもその割合が高い。

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 天然ガスだけでなく、石油もロシアに依存している。IEAによると、ロシアの石油輸出先の約6割を欧州が占める。その中でもリトアニアやフィンランド、スロバキア、ポーランドなどは石油輸入量の5割以上がロシア産だ。ドイツは主要国では最大の割合であり、石油輸入量の3割をロシアが占める。

 欧州はこうした経済システムを作り上げ、ロシアに弱みを握られていたのだ。ロシアからのエネルギー購入を減らせば、さらなる物価上昇を招くため、当初は経済制裁に二の足を踏んだが、ロシアのウクライナ侵攻が激化し、ようやく重い腰を上げた。

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