世界的な原油先物の指標となるWTIは9日、前週末比で25%下落し、米ダウ工業株30種平均は過去最大の下げ幅となった。主因は産油国の対立だ。6日に石油輸出国機構(OPEC)とロシアの追加減産協議が決裂し、サウジアラビアは増産に踏み切ると発表した。

 世界中が新型コロナウイルスの経済への影響を懸念する中で、主要産油国による「協調」はもろくも砕け散った。

 世界的な原油先物の指標となるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は9日、前週末比で25%安の1バレル=31.13ドルとなった。1日当たりの下落幅としては、リーマン・ショック時を超え、湾岸戦争の開戦直後の1991年1月に迫った。

 引き金になったのは、6日の「協調減産体制」の崩壊だ。石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどの非加盟国による「OPECプラス」は、オーストリアのウィーンで会合を開いた。

昨年12月の石油輸出国機構(OPEC)プラスの会合で同席するサウジアラビアのエネルギー相(左)とロシアのエネルギー相(右)。3月6日の会合では追加減産交渉が決裂した(写真:ロイター/アフロ)

 新型コロナウイルスの感染拡大による原油需要の減少に合わせ、生産量世界2位のサウジアラビアが協調減産を提案した。だが同3位のロシアが拒否し、交渉が決裂。これにサウジ政府は激怒したと言われる。シェア低下を回避したいサウジが増産に踏み切ることが伝わると、供給過剰の懸念から原油価格が急落した。

 生産量1位の米国を支えるシェール関連企業は、サウジやロシアより生産コストが高いプラントを多く抱える。ロシアは米の石油産業への打撃を狙って価格戦争を仕掛けたといわれる。サウジも自国の財政を痛めることを覚悟で、増産と販売価格の引き下げに踏み切ると発表した。

 こうした状況を受け、国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は、9日の記者会見で「石油市場でロシアンルーレットをやると、重大な結果を招く可能性がある」と語った。基本的には個別の政策に介入しないIEAだが、大きな代償を覚悟で価格戦争を仕掛けた産油国を暗に批判した。

 ロシアンルーレットとは、リボルバー式拳銃に1つだけ実弾を装填し、自らの頭に向かって順番に引き金を引くという生死を賭したゲームである。ビロル事務局長は詳細の説明を避けたが、需要急減の局面で増産によって原油価格を暴落させれば、予想できない副作用が生じる恐れがあることを警告したようだ。同時に、ビロル事務局長は「1バレル=25ドル以下になれば、新たなシェール開発は止まるだろう」と指摘した。

 もともと企業業績への影響が懸念されていたところで、原油先物の暴落が追い打ちをかけ、9日の米国金融市場は米ダウ工業株30種平均が前週末比2013ドル安の2万3851ドル(速報値)と、下落幅は過去最大になった。

 欧州の株式相場も軒並み下落。特に石油関連株の下落幅は大きく、前週末比で英BPは一時29%、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルは一時22%下げた。

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