ウクライナ国境近くのポーランド東部で取材しているときに、ウクライナ避難民の女性から、こんな告白を聞いた。近くでロシア軍による爆撃音が聞こえており、人々は争いながら戦火から逃れる列車に乗り込もうとしていた。その女性は列の後方におりその列車に乗れそうもなかったので、周囲を欺いた。セーターの腹部周辺に袋を詰めて膨らみをもたせ妊娠しているように装い、順番を譲ってもらい目的の列車に乗り込んだという。

 「私は悪いことをしたと十分に理解しています。父からはいつも神様が私を見ていると言われてきました。本当に悪いことです……。でも、生き残るために、やらなければならなかったのです」

 筆者はこの話をただ聞くことしかできなかった。極限の状態で国境を目指してきたのだろう。戦況から最終列車になるかもしれないと思い、しがみつくように列車に飛び乗ったり、長い距離を大きな荷物を引きずったりしながら歩いてきた人もいる。出国審査やポーランドの入国審査も大混雑だという。

 それぞれが、祖国に大事なものを残し、死に物狂いで国境を越えた。3月6日までに150万人以上が避難民となった。それぞれの物語があり、全ては伝えられないが、日経ビジネスの取材班が見た国境の様子を写真でお伝えしたい。

(以下すべての写真:永川智子)
(以下すべての写真:永川智子)

 ウクライナからポーランドに渡る手段としては、電車のほか徒歩もある。ポーランド東部のメディカへは、ウクライナから徒歩で国境を越えられる。クルマやバスで国境を目指す人々は、国境からの渋滞に巻き込まれ、荷物を抱えて20キロ以上歩くケースが珍しくない。

 国境を越え、家族や親戚、友人、ボランティアに会い、涙を流す避難民もいる。ウクライナからの避難が、どれだけつらく困難だったのだろうか。

 避難民が集まる場所には、大量の支援物資が集まる。避難民は寄付された衣類を持ち帰り、その場で食事もとっている。

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