3月3日、ウクライナ国境近くのポーランド西部のプシェミシル駅。午後1時ごろの1番プラットホームに隣接した出入国審査場は、戦争の悲惨さを表していた。

 プラットホームを降り、審査場を経てポーランドに入国してきたのは、ウクライナから避難してきた難民だちだ。前回記事「現地ルポ 家族と引き裂かれ祖国から逃げるウクライナ人たちの悲憤」で取り上げたが、避難民のほとんどは女性と高齢者、子供である。小さな子供が母親をかばい、自身の身体と同じぐらいの大きさ荷物を抱えている姿が痛々しい。

ウクライナから避難し、ポーランドの入国審査を通過したばかりの家族。背後に欧州連合(EU)の旗とポーランド国旗が見える
ウクライナから避難し、ポーランドの入国審査を通過したばかりの家族。背後に欧州連合(EU)の旗とポーランド国旗が見える

 審査場の外には、ポーランドに入国してきた避難民と向き合うように列ができていた。ウクライナに向かうためにポーランドの出国審査を持つ人々があり、屈強な男性たちの姿が目立つ。なぜ、彼らはロシア軍が激しく侵攻するウクライナに向かうのだろうか。待ち時間に話を聞くと、様々な思いを語ってくれた。

これからウクライナに入国する人々。屈強な男性が多い (写真:永川智子)
これからウクライナに入国する人々。屈強な男性が多い (写真:永川智子)

 イギーフさんはウクライナに帰国後、戦闘に参加するという。「プーチンから祖国を守るためにウクライナに行く」と、憤りを隠さずこう語った。イギーフさんはロシア軍と戦う可能性があるが、あくまで敵はプーチン大統領という認識だ。「ロシア兵はプーチンに強制されて戦っているのではないか」と付け加えた。今回のロシア軍の侵攻を、「プーチンの戦争」と捉えているウクライナ人は非常に多い。

ウクライナ人「できればロシア人と戦いたくない」

 大きなリュックを背負ったセルジオさんは、両親の住むウクライナ中西部に戻るという。両親は戦禍での移動を恐れ、街にとどまっている。まずは両親に会って安心させたいという。これまで従軍経験はないが「私は35歳だが、25歳ぐらいの気持ち。心の準備はできている」と話す。

 セルジオさんは、トラックドライバーだ。欧州中で荷物を運んでおり、2月24日にロシア軍の侵攻は始まった際はデンマークにいた。すぐにウクライナに戻りたかったが、クルマの故障で動けなかったという。「小さな頃から遊んできたロシア人の友人は多い。モスクワに幼なじみもいる。できればロシア人と戦いたくない。ロシアよりもプーチンと戦うというイメージだ」と語る。

 ウクライナに向かう列には女性もいる。ディアナさんはキエフ近郊の街に戻るという。戦争が始まってからエストニアに逃れたが、家族が心配なので戻るという。戦闘に加わる可能性があるかと聞くと、「戦う、はちょっと表現が違う。プーチンの侵略から祖国を守る」と表現した。

次ページ プーチン大統領が警戒する西側の情報