英国ではガスの小売価格が上昇し、家計での負担増が社会問題になっている(写真:AFP/アフロ)
英国ではガスの小売価格が上昇し、家計での負担増が社会問題になっている(写真:AFP/アフロ)

 その通告は突然やってくる。英ロンドン在住のトムさん(仮名)が契約していたガス会社ピュア・プラネットから2021年10月14日、事業停止のメールが届いた。サービスはシェル・エナジーに引き継がれ、ガス供給が止まった訳ではないが、トムさんは「ガス料金が突然上がって驚いた」と振り返る。

 英国でガス小売会社の経営破綻が続いている。20年末に52の小売会社が営業していたが、昨年後半からその半数以上に当たる27社が破綻した。英国では自由化で様々な事業者が電力・ガスの小売りに参入していたが、資金力に乏しい新規参入事業者がバタバタと倒れている。

 英政府は消費者保護のために小売単価の上限を設定している。結果として小売価格より、調達価格の方が高いという収支の逆ざやが発生し、その負担に耐えられない小売会社が次々と経営破綻している。

1カ月間の電力・ガス価格は約2万5000円

 筆者の家庭のガス料金も上昇している。21年10月半ばから1キロワット時当たり2.89ペンスから3.76ペンスに上昇。11月のガス料金は97.37ポンドに達した。電気代と合わせると161ポンド(約2万5000円)だった。

 電気・ガス料金の負担が重いので、在宅勤務の昼間はできるだけ日の当たるところで仕事をして、暖房と電気を節約している。以前は夜は冷えるので就寝時も暖房をつけていたが、暖房を止めて厚手の毛布を使うなど節約に努めている。

 以前はエネルギー大手のフランス電力公社(EDF)と契約していたが、電気・ガス料金が非常に高かったので、低価格と使い勝手の良さを武器にシェアを伸ばす英オクトパス・エナジーという新興企業と契約した。同社はスタートアップながら英国で6位のシェアを持ち、日本で東京ガスと提携し共同出資会社を設立するなど、新進気鋭のエネルギー企業だ。その同社からも今年1月中旬、悲痛なメールが届いた。

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