
欧州で電気を利用した省エネ機器のヒートポンプ暖房給湯器の需要が急増している。欧州シェア首位であるダイキン工業のベルギー工場やダイキンヨーロッパの社長、機器のユーザーを取材した。
ベルギーの港町オステンド。ここに、ロシア産ガスを使わない商品として欧州中で注目されている商品の一大生産拠点がある。日本のダイキン工業が欧州トップシェアを誇るヒートポンプ式暖房給湯器だ。
ヒートポンプ式は電気で冷媒を圧縮して熱を生み出して温水をつくり、暖房や給湯に用いる。ガスボイラー式に比べて二酸化炭素(CO2)排出量を約65%削減できるのが特長だ。従来はガス価格が安かったため、効率が良くないものの導入コストの安いガスボイラー式が主流だったが、ガス価格の急騰によりヒートポンプ式の需要が急増している。
1月上旬に工場を訪れると、青色と灰色のダイキンのユニホームを着た従業員たちが工場内を動き回っていた。大きなプレス機が次々と製品のパネルを成型し、ロボットがラインに載せていく。パネルはコンベアにつるされて、塗装工程に入っていく。従来の空調機器はカラーバリエーションが少なかったが、デザイン性を高めるために塗装の色を増やしている。
組み立てラインは自動化している工程もあるが、人手が必要な工程が多く、従業員が配線の接続やネジ締めなどの作業を進める。それぞれの身長や作業の場所に合わせて自身の作業台の高さを上下に変えられるため、かがむなどの作業負荷が少なく、男女を問わずスムーズに作業をしている。

生産現場は増産対応に必死だ。同工場はもともと業務用空調機器の一大拠点だった。それがヒートポンプ式の需要急増で、その生産ラインを増やしている。工場内の配置を工夫して、22年春にヒートポンプ暖房給湯器用のラインを増設。さらに23年にも増設する予定だ。ダイキンヨーロッパ生産本部のアンディ・デウィルデ生産技術部長は、「様々な調整を繰り返して、工場にヒートポンプ式を増産できるスペースを作った」と振り返る。
欧州でガス価格が高騰したために、電気を利用するヒートポンプ式暖房給湯器が注目されているが、これは一時的なブームなのだろうか。ガス価格が下がれば、ブームは冷え込んでしまうのだろうか。
ダイキンはそのように見ていない。ダイキンヨーロッパの坪内俊貴社長はこう語る。「欧州連合(EU)は50年に温暖化ガス排出量を実質ゼロにする目標を立てた。更新サイクルを考えれば30~35年までにヒートポンプは1000万台市場になる」
Powered by リゾーム?