
欧州で日常生活のインフラがまひしつつある。前年同月比で10%前後の物価上昇が続き、生活の苦しい人々が賃金上昇を求めてウォークアウト(抗議のための一時的な職場放棄)などのストライキをしているためだ。
欧州のストライキの特徴は医師や看護師、救急隊員、教師、鉄道職員など生活インフラに欠かせない仕事を担うエッセンシャルワーカーが参画している点だ。特に英国のストライキは激しく、2月1日はそうした職種の人たちが足並みをそろえ、「ストライキ地獄」がやってくると警戒されている。「英国病」といわれ景気低迷にあえいでいた1979年以来の規模のストライキとなる。
英メディアはストライキのカレンダーを作っている。もはや公共交通機関のストライキは珍しくなく、「日常」となっている。人々はストライキを避けるため在宅勤務にしたり、移動を控えたりしている。
救急隊員のストライキで市民が行動を控える動きも
医師や看護師、救急隊員がストライキに入っており、病気やけがで十分な医療サービスを受けられない可能性があるため、ストライキの当日は外遊びやスポーツなどけがのリスクがある行動を控える動きも広がっている。
実際、ストライキ当日は心臓発作など最も深刻度が高い救急搬送は受けられたが、それ以外は受けられる保障がなかった。英国のシャップス・ビジネス相は「文明社会ではストライキで救急車を手配できないようなことはあってはならない」と非難した。

ドイツやフランスでもストライキが頻発している。フランスでは22年12月に大規模な国鉄職員のストライキがあったほか、医師のストライキがあった。ドイツではルフトハンザ航空のパイロットや主要港の従業員がストライキを実施したほか、23年1月にはドイツポストの配送センターなどに勤める職員がストライキに入った。
それぞれのストライキが互いに影響している面もある。例えば、看護師は病院に鉄道やバスなどの公共交通機関で通っている。これらのストライキがあまりに多いため、看護師の欠勤率が高まっている面もある。
様々な職種のストライキがある中で、象徴になっているのが看護師だ。英国には国民医療制度(NHS)という仕組みがあり、かなりの時間待たされることがあるものの、納税者であれば原則的に誰でも無料で医療サービスを受けられる。
NHSは税金に支えられているため、所属する看護師の賃金は国が決める。NHSに所属する看護師の約3分の2に当たる30万人ほどが所属する王立看護協会(RCN)は19%の賃上げを求めている。政府はそれに応じる姿勢を見せないため、12月に設立から約100年で初めての全国的なストライキに入った。
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