欧州連合(EU)で新型コロナウイルスのワクチン接種に関する混乱が続いている。ワクチンを生産する米ファイザーが、生産工程の変更のために一時的に供給量が減ることを1月15日に明らかにすると、スウェーデンやデンマークなどEU加盟6カ国の保健相らが欧州委員会に宛てた書簡の中で、「容認できない」と表明した。

 どの国もワクチンの調達を渇望しており、ワクチンの開発企業に対する注目は高まる一方だ。欧州では米ファイザーとワクチンを開発し、欧米各国への供給で先行する独ビオンテックのウグル・サヒン最高経営責任者(CEO)の発言はたびたび話題になっている。

 ただ、ワクチンメーカーの奮闘だけでは世界中の人々にワクチンを届けることができない。ワクチンの保管や輸送を担う企業が静かな脚光を浴びており、特にドイツには有力な裏方企業がある。

■シリーズ「ワクチン」のラインアップ(予定)
第1回:英国、医療崩壊の懸念でリスク覚悟のスピード接種へ
第2回:EUの弱点が露呈、開発国ドイツで接種遅れにいら立ち
第3回:接種で株価一時7倍、ホットな裏方はかなりコールド
第4回:ネットで拡大する反ワクチン主義

超低温冷蔵庫を開発、生産するドイツ企業が、新型コロナウイルス用ワクチンの保管、運搬で耳目を集めている(写真:ロイター/アフロ)
超低温冷蔵庫を開発、生産するドイツ企業が、新型コロナウイルス用ワクチンの保管、運搬で耳目を集めている(写真:ロイター/アフロ)

 これまでその名をほとんど知られていなかったドイツ企業が、新型コロナのワクチン関連銘柄として注目を集めている。独中部のヴュルツブルクに本社を置くバキューテックだ。株価は2020年3月の底値に比べ11月には最大7.5倍に高騰し、足元でも4.5倍前後の水準で推移している。同社は超低温冷凍庫を手掛け、新型コロナワクチン用での受注が急増している。

 バキューテックはエールフランスKLMなど世界の航空大手や貨物輸送会社と提携。21年1~3月期から、世界最大規模の製薬グループに数千個の高性能輸送コンテナを貸与する契約を結ぶなど、ワクチンの大量供給を支える企業の1つとして期待が高まっている。同社の前身は、省スペースを実現する断熱材の研究グループが00年にスピンアウトした大学系スタートアップで、16年にフランクフルト証券取引所に上場した。

 同社が注目されているのは、新型コロナワクチンの特性ゆえだ。世界で供給が進む米ファイザーと独ビオンテックが開発したワクチンは、セ氏マイナス70度で管理しなければならない。バキューテックは超低温の保管技術とエネルギー効率の高さが売りだ。20年1~9月期の売上高は前年同期比13%増の5320万ユーロ(約67億円)だった。

 技術的な最大の特長は、超低温を保つための外部電源が必要ない点だ。独自の断熱技術を使用したバキューテックのコンテナ容器は、断熱性の高さを強みとする。セ氏マイナス25度からマイナス70度の範囲で一定の温度を、エネルギーの供給なしに数日間にわたって保つことができるという。

 極めて低い温度でもドライアイスの必要性は最小限に抑えられており、より安価にワクチンを輸送できるため、外部電源が確保しづらい地域でも需要が拡大しそうだ。さらに、同社によるとセ氏マイナス70度の超低温環境が必要になる大陸間の長距離輸送と、現地到着後の2~8度環境下での配送を、同じコンテナ容器に入れたまま実現できるという。

 同じく冷蔵輸送事業を手掛けるスウェーデンのエンビロテイナーは、中身の冷却に電気モーターを利用する技術を採用。ドライアイスを使わないことによる空輸時の安全性の高さとコスト効率の良さを売りにしている。

続きを読む 2/2 独ショットはワクチン20億回分の小瓶を出荷予定

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