電力大手にクラーケンを提供していますね。オクトパスの電力サービスと、電力大手の電力サービスをどのように差異化しているのでしょうか。
ジャクソン氏:オクトパスは、欧州電力大手エーオンや仏電力公社(EDF)など世界の顧客を抱えています。こうした顧客はすべて、エネルギーのオペレーティングシステムとしてクラーケンを使えます。しかし、そうした企業も自社アプリを作ることができます。なので、顧客は使っているアプリをカスタマイズしたり、自社アプリを作ったりして差異化を図れます。
例えばあなたのスマホは、私のスマホとほぼ同じものですね。でも、私のスマホの使い方はあなたの使い方と全然違うでしょう。私はあなたとは全然違うアプリをインストールしているかもしれませんし、同じアプリを持っていたとしても、全然違う使い方をするかもしれません。でも、持っているのは二人とも同じスマートフォンです。

新電力を買収。150万世帯の顧客獲得も
経営破綻した英国の新電力「バルブエナジー」を買収することを発表しました。どのように買収コストを回収しますか。
ジャクソン氏:バルブの買収プロセスは、英国の法律のもと、法的手続きを現在進めているところです。うまくいくことを願っています(このインタビューの後に正式に買収が完了した)。バルブの顧客は、オクトパスの顧客と大変似ているんです。再エネに移行したいと考えている人たちで、オクトパスはそうした顧客の要望をかなえています。
また、オクトパスは重要な役割を担わなければなりません。英国の納税者はバルブを支えるために多くの税金を払ってきました。バルブの民間への移行を支えるのは、責任ある英国企業としての義務だと思っています。
私たちは、バルブがオクトパス傘下になって利益を生むようになったときに、英国政府がその一部を得ることができるよう、利益分配を提案しました。この提案は、公共部門がリスクを吸収して利益を得られる可能性がある、大きなイノベーションです。
オクトパスエナジーは大量の再エネを提供しています。化石燃料と比べてコスト構造はどうなっていますか。
ジャクソン氏:英国のように高度な経済を持つ国すべてで、エネルギー市場は完全にゆがんだものとなっています。現在のように電力の価格がガスの価格によって左右されるというのは、異常な事態です。エネルギーシステムを根本的に変える必要があります。私たちは、再エネは現在の化石燃料よりも安価になること、また毎年安くなっていくことを確信しています。顧客が再エネの利点を活用できる市場構造が必要です。
クラーケンは再エネが豊富にあるときには最大限活用して、これまでにないほど安価に電力を使えるようにできるツールです。それにより、とても効率的にEVやヒートポンプ式暖房給湯器を稼働できます。現在の市場価格には、再エネの利点が全く反映されていないので、それを変えていかなければなりません。
経営破綻した新電力はトレーダーだった
エネルギー価格高騰により、多くの新電力が電力の販売価格より調達価格が高い逆ざやに陥り、経営破綻しました。一方、オクトパスエナジーは事業を拡大しています。オクトパスと破綻した企業の違いとは何でしょうか。
ジャクソン氏:重要な違いが2つあります。1つ目は、多くの電力会社はトレーダーだということです。そうした会社は、安くエネルギーを仕入れ、利益が出る値段で販売します。市場の状況が悪くなったら、店を畳み、市場から出ていくのです。
オクトパスはビジョンを持って創業されました。安価な再エネを提供できるようにグローバルなエネルギーシステムを変えること、技術を通じて再エネを最大限活用すること、最善の技術で素晴らしい顧客体験を提供することといったビジョンです。つまり、私たちは単に問題を解決するのではなく、卓越したサービスを提供しているのです。
2つ目の違いは、そうした大きなビジョンに投資をしていることです。オクトパスは新電力の平均に比べて16倍以上の投資を受けています。それにより、オクトパスは困難な状況に耐え、素晴らしい人材を雇用できています。
経営難に陥った企業はすべて、リスクヘッジをきちんと行っていませんでした。オクトパスはトレーダーではないので、リスクヘッジの手立てをしっかり講じています。私たちはトレードに頼ることなく、根本的なシステムの改善とオペレーションの効率性を通して価値を高めてきました。リスクヘッジには、多くの資本が必要となります。
2021年12月期は最終赤字でした。その最大の要因は何でしょうか。
ジャクソン氏:まず1つ目の理由として、急成長している企業は、通常多くの損失を出します。顧客の数を増やすことに投資するからです。オクトパスの場合は、技術にも投資しています。もう1つの理由は、今年も含めエネルギー危機の間に、販売価格を下げるために莫大な投資をしてきました。この厳しい状況で、顧客を大切にするのが最も重要なことだと考えています。
長期的にはライバル企業よりも低いオペレーションコストを実現し、クラーケンを通して再エネの収益性を高められるでしょう。グローバル規模でこのデジタル技術であるクラーケンのライセンスを持っているエネルギー企業はオクトパスだけなので、オクトパスの財務状況は他の電力会社と完全に異なります。
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