欧州のエネルギー危機で、多くの新電力が経営破綻に追い込まれた中、英国のオクトパスエナジーが成長している。世界の電力大手や東京ガスが目をつけたのは、オクトパスが独自開発する電力管理システムだった。危機はイノベーションの土壌となり、そこから次世代の企業が生まれ、成長する。その象徴であるオクトパスエナジーのグレッグ・ジャクソン最高経営責任者(CEO)に話を聞いた。
電力や顧客管理のシステム「クラーケン」に強みがあります。どのような狙いでクラーケンを開発したのでしょうか。
グレッグ・ジャクソンCEO(以下、ジャクソン氏):クラーケンはグローバル規模のクラウド上で動くように設計されていて、機械学習とビッグデータ、人工知能(AI)を活用して構築されています。これは再生可能エネルギーの世界には不可欠となります。
再エネの世界では、電気は膨大な数のソーラーパネルや風力タービンによって生み出されます。これらは、天気に左右されます。また、このエネルギー転換の中、内燃エンジン車から電気自動車(EV)、ガスボイラー式暖房給湯器からヒートポンプ式暖房給湯器への移行という現象もあります。これらの機器は従来よりもずっと柔軟にエネルギーを使えます。
安価な再エネを活用するには、多くの人が恩恵を受けられるこうした技術が必須です。クラーケンは特殊で、世界中で同じように機能します。東京でEVを効率的に充電する顧客体験を改善するのに、ロンドンやヒューストン、メルボルンで学んだことすべてを即座に生かせるのです。タクシー業界で米ウーバーがやったような技術革新をエネルギー業界で起こしているのです。

どのようにクラーケンを開発したのでしょうか。
ジャクソン氏:クラーケンはすべて、オクトパスの技術チームが開発しました。チームはロンドン、東京、オークランド、ウェリントン、シドニー、ヒューストン、シリコンバレー、ベルリンなどにあります。このグローバルチームはオクトパスグループの一員で、技術を通じて地球に良い影響をもたらしたいと望む人たちの集まりです。
企業用ソフトウエアに通じている人の多くは、四半期、または毎月ソフトウエアがリリースされるという状況に慣れていると思います。クラーケンの場合は、1日に100個のアイデアをリリースしています。私たちは1日24時間、世界中で開発しているこそ、クラーケンはコストを下げ、非常に良い顧客体験を世界中で提供できるのです。
どのような場面で使われますか。
ジャクソン氏:クラーケンはエネルギーにとってのオペレーティングシステムのようなものです。また、クラーケン上で動くアプリがたくさんあります。顧客体験、EV充電との連携、電力系統規模や家庭規模で電池を管理する機能、各ソーラーパネルや各風力発電所の発電を予測する機能など、多くの機能がクラーケン上で動いています。
オクトパスは、クラーケンに付属するアプリもすべて開発しています。スマートフォンを買うと、素晴らしいオペレーティングシステムと共に、たくさんのアプリもついてきますよね。それと似ています。加えて、世界中のクラーケンの顧客は、それに自分たちのアプリを追加できます。そうして、クラーケンは各顧客が望むエネルギー体験を提供できているのです。
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