2021年末の英ロンドン市内。新型コロナウイルスの感染者が急増していたが、厳しい行動制限はなく買い物客などでにぎわっていた(写真:AP/アフロ)
2021年末の英ロンドン市内。新型コロナウイルスの感染者が急増していたが、厳しい行動制限はなく買い物客などでにぎわっていた(写真:AP/アフロ)

 2021~22年の年末年始。日本と英国の街で、対照的な光景を目にした。

 英国では12月から新型コロナウイルスの新規感染者数が急増し、年末年始には1日当たりのそれが20万人を超える日もあった。変異型「オミクロン型」がまん延し始めてからは、イングランドの公共交通機関や店内でのマスク着用が義務付けられたが、それでも英ロンドンの店内でマスクをしていない人は多い。「ノーマスクの人はお断り」との張り紙がある店内で、利用者だけでなく店員もマスクを着用していないケースも珍しくない。

 筆者は英国でオミクロン型が流行する前に、日本に一時帰国していた。日本では、まだオミクロン型は数件確認されていた程度だったが、店内だけではなく、屋外でもほとんどの人がマスクを着用していた。一方、英ロンドンの屋外でマスク姿の人を見かけるのはまれだ。マスクだけが新型コロナ対策ではないが、街の光景を見ただけでは、どちらの国で新型コロナの感染が拡大しているのか、分からなくなる。

感染爆発後も小学校の運営に大きな変化はない

 英国のジョンソン首相は1月4日、新型コロナ対策としてロックダウン(都市封鎖)など追加の規制は導入しないことをわざわざ発表した。小学校では予定通り新学期の授業が始まっており、教師や保護者、子供たちがマスクをするなど追加の対策を取る気配はない。

 追加の規制を導入しない理由はいくつかある。1つは、重症者数の推移だ。ジョンソン首相は「入院患者は増えているが、過去の流行時のように重症者は増えていない」と説明している。確かに入院患者数は1年前の半分程度まで増えてきているが、人工呼吸器付きのベッドの利用者数は、4分の1程度にとどまっている。新型コロナによる死者数は1年前に比べておよそ10分の1で、12月の感染爆発以降も大きな変化はない。

英国の1日当たりの新型コロナ新規感染者数。21年12月以降に急増し、20万人を超える日もあった(出所:英政府)
英国の1日当たりの新型コロナ新規感染者数。21年12月以降に急増し、20万人を超える日もあった(出所:英政府)
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 この局面で新たな規制を導入しないばかりか、むしろ規制が緩和されている。英国はオミクロン型の感染を防ぐために11月下旬に、いち早く南アフリカなどアフリカ南部の国々からの入国を制限し、他国からの入国者について事前の陰性証明を求めた。だが、英国内でオミクロン型がまん延し、12月15日にはアフリカ南部の国々からの入国制限を解除。年明けの1月7日には入国前の陰性証明も必要がなくなった。

 欧州各国では飲食店などに入店する際に、ワクチンの接種証明書の提示を求めるのが一般的だ。英国ではナイトクラブや大型イベントに入場する際には提示が義務付けられたが、飲食店に適用することは見送られた。

 こうした現状について、英エコノミスト誌の元編集長ビル・エモット氏は「規制より各人の責任に委ねるという意味で、『スウェーデン・モデル』に近いかもしれない。これが飲食店などの接客業にどのような影響を及ぼすかに注目している」と話す。

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