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1月4日、英国で英アストラゼネカ製の新型コロナワクチンの接種が始まった。左は接種を見守るジョンソン英首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 英国が新型コロナウイルスの感染拡大が始まってから、最も厳しい局面を迎えている。2020年12月から感染力が強いといわれる変異種が広がり、新規感染者が増え続けている。1月4日まで7日連続で新規感染者数が5万人を超え、5日と6日にはそれぞれ6万人を超えた。

 新型コロナの入院患者は6日時点で3万人を超え、4月のピーク時より39%増加している。いくつかの病院では受け入れ能力を超え、いわゆる医療崩壊が現実味を帯びている。ジョンソン英首相は、「病院には感染が始まってから最大のプレッシャーがかかっている」と危機感をあらわにした。

 医療崩壊の懸念から、英政府は5日から2月中旬までイングランド全土で3度目となるロックダウン(都市封鎖)を導入。ジョンソン首相は「今後数週間は、最も困難な状況になるだろう」と語った。

 こうした危機的な状況の中で、希望の光になっているのが、新型コロナウイルスのワクチンだ。英政府は20年12月上旬に米ファイザーと独ビオンテックが開発したワクチンを承認し、世界でいち早くワクチン接種を始めた。1月5日までに130万人が接種を受けている。英アストラゼネカ製のワクチンも20年末に承認し、1月4日から接種が始まった。

 日本政府は2月下旬からワクチンの接種を始めることを目指している。日本より早く大規模な接種が進む英国や欧州の事情を参考にしていただきたい。

■シリーズ「ワクチン」のラインアップ(予定)
第1回:英国、医療崩壊の懸念でリスク覚悟のスピード接種へ
第2回:接種で遅れるEU、開発国のドイツから不満も
第3回:ドイツ勢に脚光、知られざるワクチン接種の裏方企業
第4回:ネットで拡散する反ワクチン主義
第5回:途上国の接種はどのように進むのか


 1月5日、英ロンドンの大学付属病院で看護師長を勤めるロッシ真由美氏は、前日から少し緊張していた。この日に、新型コロナウイルスのワクチンを接種することになっていたからだ。

 午後2時頃に声がかかり、問診票に必要事項を記入する。アレルギーをいくつか持っていたので懸念があったが、担当医師は接種にゴーサインを出した。左腕の上部に米ファイザー製のワクチンを接種した。

 当日は、接種箇所の周辺に鈍痛があり、腕を動かす度に痛みが走った。個人差があるものの既に接種した同僚からは「最低48時間が痛みは続く」と聞いていたので覚悟はしていたが、夜までひどい痛みと倦怠(けんたい)感が続いた。

ロッシ真由美氏の新型コロナワクチンカード。名前と次回の接種日が記載されている

 翌日になっても痛みと接種箇所の腫れが続き、腕が上がらないので解熱鎮痛剤を服用。「予想以上に痛みが続いた。ただ、医療現場や社会全体のために接種した方がいいと思う」とロッシ氏は話す。ファイザーのワクチンは「メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン」と呼ばれる新しいタイプで、臨床試験(治験)の段階から痛みなどの副反応は指摘されていた。実際の接種でも同様の症状が出ているようだ。

 ロッシ氏が勤める病院では着々と接種が進んでいる。8600人ほどの病院スタッフのうち1月5日までに5000人超がワクチンを接種を受けた。以前はワクチン接種に消極的だった人々も、義務ではないにもかかわらずそのほとんどが接種を受けているという。