ニトリホールディングスがホームセンターの島忠に対し、TOB(株式公開買い付け)に乗り出す意向を表明した。島忠には既にホームセンター大手のDCMホールディングスがTOBをかけている最中で、島忠を巡る争奪戦となった。だが両社のTOB価格には大きな開きがある。DCMの1株4200円に対し、ニトリの提示額は5500円。この金額は島忠を一発で仕留める効力がありそうだが、「お、ねだん以上。」で買ってしまうリスクもはらむ。

「信じられない価格」「M&Aに慣れていないからか?」。ニトリがTOB価格を5500円にすると発表した10月29日以降、M&A関連業界ではあちらこちらからこんな声があがっている。要するに「高すぎる」というのが共通認識なのだ。確かにニトリは大型のM&Aをしたことがなく、巧者とは言えない。では本当に5500円は高いのだろうか。
ニトリのリリースを見ると、ファイナンシャルアドバイザーに大和証券を起用し、大和は4つの手法で島忠の株式価値(買収した場合のシナジー効果は含まない)を算定している。それによると市場株価法①と②はそれぞれ株式価値が2849円~2945円と3157円~4890円。類似会社比較法では2239円~4114円、ディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)法では2964円~5763円となっている。一見すると、確かに5500円のTOB価格はやや高いという印象はぬぐえない。
しかもM&A業界関係者がそろって首をかしげるのは「後出しで有利なのになぜこんな必要以上に高めのタマを投げたのか」だ。つまりDCMが4200円でTOBをかけているところに後から参入するのだから4500円や5000円でもいいのに、一気に5500円はやりすぎだという指摘だ。ニトリ関係者は「DCMがついてこられないように一発で決めに行った」というが、それにしても、というわけだ。
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