ホームセンター大手のDCMホールディングスがTOB(株式公開買い付け)で買収しようとしている島忠に対し、家具・日用品大手のニトリホールディングスが待ったをかけそうだ。ニトリは島忠への対抗TOBを打ち出す準備を進めているが、じつはこの「待った」は文字通り「待ちに待った」策とみられる。DCMが島忠と買収交渉をしていることを以前から察知していたニトリは、先に買収を仕掛けると敵対的になってしまうリスクが大きいと判断し、DCMによる島忠買収発表を待ってカウンターを発動する作戦だったようだ。

島忠争奪の序盤戦で優位に立っているようだ(ニトリ札幌本社、写真:YUTAKA/アフロ)
島忠争奪の序盤戦で優位に立っているようだ(ニトリ札幌本社、写真:YUTAKA/アフロ)

 「エイチ・アイ・エス(HIS)のようになってしまうのは得策ではない」。ニトリ陣営の複数の関係者はこう漏らす。彼らが指しているのは、昨夏に旅行大手のHISが突如、不動産やホテルを手掛けるユニゾホールディングスにTOBを仕掛けた一件だ。合意がないまま仕掛けたTOBはユニゾ経営陣の反発を受けて敵対的TOBとなり、結局失敗してしまった。そしてHISのような大企業が敵対的TOBを仕掛けるのか、と世間で大きな話題にもなった。

 ニトリ陣営が考えたのは「DCMの発表を受けてからのカウンターならば、仮に敵対的になったとしてもそのイメージを和らげられるうえ、後出しジャンケンになるから価格面を含め戦略が立てやすい」(金融機関関係者)というものだ。つまり、レピュテーションリスクも考えると先にけんかを売った格好になるのは避けたい、ということになる。

 頭の中にあったのは、昨年、東芝がニューフレアテクノロジーの完全子会社化を発表した後に、HOYAがニューフレアの同意を得ないままTOBをかける意思表示をした一件だ。HOYAはTOBの意思表示こそしたものの、結局、勝算がないとみて実際にTOBを始めることなく撤退した。事実上の敵対的TOBだったが、発動されることなく未遂に終わった。

 ニトリは今回、HISではなくHOYAのような立ち回りをしたい、ということだろう。そのため、DCMによる島忠買収発表を先に行わせた方がいいということになる。またニトリはいきなり対抗TOBを仕掛けるのではなく、HOYAのようにTOBをかける意思表示だけして、まずは相手の様子をうかがう、ということも視野に入れているようだ。

 ふたを開けてみると、DCMによるTOB価格は解散価値に相当するPBR(株価純資産倍率)1倍となる水準を割り込むなど非常に割安なもので、「これなら勝負できる」(ニトリ関係者)となった。

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