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 伊藤忠商事がファミリーマートに対して実施しているTOB(株式公開買い付け)に対し、株主がかみついた。複数の海外ファンドが1株当たり2300円のTOB価格は安過ぎると疑義を唱え、価格引き上げや特別配当を要求したのだ。

 だが伊藤忠は価格引き上げをきっぱりと否定している。そこには新型コロナウイルスまん延後のファミマの実力の認識で、大きな隔たりがあるようだ。(参考記事:ファミリーマートTOBの伊藤忠、「買い付け価格は引き上げない」宣言

(写真:ロイター/アフロ)

 三菱倉庫や安藤ハザマに株主提案するなど、すっかり「物言う株主」の名が板についた香港のファンド、オアシス・マネジメントは8月7日、ファミマに最大1062円の特別配当を求める声明を発表した。それに呼応するように8月11日には米ファンドのRMBキャピタルがTOB価格を300円引き上げて2600円にするよう提案するという声明を発表した。

 両社の主張は根本的に一緒。伊藤忠が完全子会社化を目指して開始したTOB価格が安過ぎるというものだ。オアシスの主張はファミマに特別配当を要求したものだが、お金の出所が違うだけで、事実上、TOB価格を3362円にしろと言っているに等しい。

パナホームTOBで実績のオアシス

 オアシスは日経ビジネスの取材に対し、ファミマ株の価値は3000円を十分に超えているとし、伊藤忠やファミマが要求を飲まないときには「必要な場合には株式買い取り請求権を含めた法的な選択肢を追求していきたい」と強気の姿勢を見せた。

 株式買い取り請求権とは株主が保有する株式を公正な価格で買い取るよう会社に請求できる権利で、株主と会社との間で協議がまとまらなかった場合、株主は公正価格の決定を求めて裁判所に申し立てを行うことができる、というものだ。

 過去にオアシスは似たような行動を起こしている。パナソニックが2017年、54%出資するパナホームを完全子会社化しようとした案件だ。パナソニックは当初、株式交換による完全子会社化を発表したが、オアシスは株式交換比率に問題があると主張。パナソニックはその後、買収手法をTOBに切り替え、事実上買収価格を上積みする羽目になった。この時もオアシスは少数株主の利益が損なわれたとして訴訟を起こすと宣言していた。

 オアシスやRMBの動きに対し、金融関係者の間では「やっぱり来たか」という反応が多い。今回のTOBは「突っ込みどころが多い」(国内大手証券)と言われてきたからだ。