前田建設工業の敵対的TOB(株式公開買い付け)で子会社となった前田道路が14日、東京都内で臨時株主総会を開き、535億円の特別配当を実施する議案を可決した。TOB終了前の議決権ベースで開かれた総会のため、前田道路側の提案が通った。豊富な現預金を前田建設に使われるくらいなら、大部分を株主に還元しようとしたともとれる「焦土作戦」は一応、成功したことになる。だが2カ月後の6月に定時株主総会が待つ。前田建設に徹底抗戦した今枝良三社長を含め、前田道路の現経営陣が刷新される可能性がある。前田道路の経営陣を待ち受けるのは融和か、それとも粛清か。

新型コロナの影響で臨時株主総会の参加者は少なかった

 14日に都内のホテルで開いた前田道路の臨時株主総会は、新型コロナウイルスの影響もあり出席者が数十人、所要時間も20分強とあっさりしたものだった。議案が特別配当の1つだけだったことももちろんある。だが質問も個人株主ら4人から「前田建設と合併するな。大きい方の言いなりになってしまう」「特別配当するくらいなら本業の投資に回すべきだ」といったものが出ただけ。特別配当をする原因を作った筆頭株主の前田建設が質問しなかったことで、盛り上がることなく終わった。

ニンジン作戦、あっさり可決

 事前の議決権行使により過半数の賛意が得られていたとみられ、議場では挙手での採決となり、議案は難なく可決。前田道路が即日出した臨時報告書を見ると、賛成は65.54%だった。25%の株を保有していた前田建設は反対に回ったとみられるが、大増配という「ニンジン作戦」に多くの株主がなびいたことになる。

 焦土作戦が成功し、前田道路が勝利した形だが実態はどうなのか。ため込んできた現預金の多くを株主にばらまいたことで、財務体質にこれまでのような堅牢(けんろう)さはなくなった。今枝社長は株主総会の場で「これでROE(自己資本利益率)が向上する」と強がったが、本来は前田建設が持つ前田道路株を買い取って資本関係を解消するために蓄積した資金であって、それを株主に還元せざるを得なくなったのは誤算以外の何物でもないだろう。

 そしてこれから先、いったい何が起こるのだろうか。

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