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 不動産やホテルを手掛けるユニゾホールディングス(HD)の争奪戦にとうとう決着がつきそうだ。半年以上という超異例の長期間にわたった米ファンドのフォートレス・インベストメント・グループによる敵対的TOB(公開買い付け)が失敗。現在、実行されているTOBは、従業員による買収(EBO)だけになった。登場人物、そして敵と味方という立場がころころ替わったユニゾ争奪戦は最終段階に入った。

半年以上の異例の長期間にわたったユニゾホールディングス争奪戦は決着か

 「もはやこれまで」(フォートレス関係者)。2019年8月19日から半年以上もTOBを続けてきたフォートレスは3月19日、TOBの不成立を発表した。何度も買い付け期間を延長し、TOB価格を引き上げてきたが、ついに白旗をあげた。前日の3月18日にEBOの実行主体であるチトセア投資が、TOBの買い付け価格を1株5700円から6000円に引き上げたことがとどめを刺した。フォートレスの最後の買い付け価格は5200円(19年8月のTOB開始時点では4000円)だった。

 この半年間の展開は波瀾万丈(はらんばんじょう)だった。旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)が19年7月に突然、敵対的TOBを開始。ユニゾHDがホワイトナイト(白馬の騎士)としてフォートレスを呼び込み、さらに米投資ファンドのブラックストーンなど複数の買収候補者が具体的なTOB価格を提示して争奪戦となった。HISの撃退に成功するとユニゾHDはフォートレスのTOBにも一転して反対、対抗策としてEBOを打ち出した。後半戦は友好的から敵対的に転じたフォートレスによるTOBと、チトセアによるEBO実施に向けたTOB、そしてブラックストーンのTOB提案(あくまで提案で実際にTOBはかけていない)の3案が競り合い、買い付け価格の引き上げ合戦となっていた。

 ただ3月18日にチトセアが打ち出した1株6000円への価格引き上げは事実上の「王手」となった。この引き上げはこれまでと覚悟が違うからだ。一つは株価だ。チトセアは当初5100円だった買い付け価格を2月に5700円に引き上げたが、これはブラックストーンなどのTOB提案価格引き上げで実際の株価が5100円よりも上昇してしまい、TOBの成立が見込めなかったから。今回は株価が5700円を下回り、そのままでも応募が見込めそうな中での価格引き上げだ。「絶対に勝つという強い意志を見せた」とユニゾHD関係者は語る。

 もう一つが応募契約だ。今回チトセアは、13.14%のユニゾHD株を保有する筆頭株主のエリオットグループと、9.33%の同株を保有するいちごグループとの間で「応募契約」を結んだ。両社はより高値でのTOB(提案ベースではなくあくまで実行されていることが条件)が出てこない限り、チトセアのTOBに応じると約束したのだ。これまで各社がTOBの価格引き上げを繰り返してきたが、大株主の支持を得ていると公表したのは今回が初めてだ。

 この「こん身の一撃」(ユニゾHD)を発表した3月18日は、フォートレスのTOBの最終日でもあった。これを見たフォートレスはさすがにもう対抗する気をなくしたのだろう。「期間が半年以上にも及ぶTOBなんてこれまで見たことがない」と投資銀行関係者が口をそろえる超長期間のTOBはとうとう敗北という形で幕を閉じた。

 これで実際に行われているTOBはチトセアの6000円だけになった。ブラックストーンが同じく6000円でTOBを提案しているが、「ユニゾHDと合意の上でしかTOBをしない」(ブラックストーン関係者)前提のため、あくまで提案止まりで実行には至っていない。「ブラックストーンと合意をすることなんてあり得ない」(ユニゾHD関係者)とすると、このままチトセアによるTOBだけが4月2日の最終日まで走ることになる。

 これまで誰かがTOB価格を引き上げるたびに「誰かがまた対抗してくるのでは」という期待感から買い付け価格を上回る傾向が強かった株価も、今回ばかりはすっと6000円近辺にサヤ寄せしに行った。「対抗TOBがまだ出てくるとは思えない」(ユニゾHD株を持つ個人投資家)というのが株式市場に漂う雰囲気だ。

 常識的に考えればこのままチトセアによるTOBが成立する公算が大きくなってきたということになるだろう。となるとユニゾHDに残る懸念は社内の反乱だ。3月9日に「スクープ ユニゾで反乱、従業員が小崎社長を東証に告発」で報じた通り、ユニゾHD従業員の一部が「EBOは従業員の総意ではなく小崎哲資社長らが強引に主導している。公表資料は虚偽記載に当たる」と東京証券取引所や証券取引等監視委員会に小崎社長を告発したことが明らかになっている。

 告発を受け、東証は会社側に対してヒアリングを行っているもようだが、会社側は「弁護士のアドバイスも受けたが、虚偽記載ではないという通り一遍の答えを用意するだけ」(内情を知る会社関係者)という。詳細に反論すると、それがまた虚偽だと墓穴を掘るからだという。

 こうした会社の対応に東証はどう向き合うのか。警察のように強制捜査権があるわけではなく、ましてや会社内部の思惑には口を出しようもない。あくまで投資判断に影響を与える情報が適時適切に開示されたかどうかを調べ、不備があれば、指摘して出し直させるのが限界だろう。誤解を恐れずに分かりやすくいえば、会社側が仮に記載不足だった点を訂正報告書などで補いさえしてしまえば、東証にTOBをやめさせる権限はないのだ。

 そうした権限の話になると、財務省関東財務局のように公開買い付け届出書を届け出る機関の管轄になってくると思われる。一部従業員の訴えは、関係機関をどこまで動かすことができるのか。いずれにしろ争奪戦が最終盤に入ったことだけは間違いない。