失敗しない指揮マニュアル

 一方、チームを率いて任務を成し遂げる「指揮」の方法については、自衛隊の歴史の中で培われてきた、効率的で確実な手順が、体系的なマニュアルにまとめられており、幹部候補生学校ではこれを反復して習得させる。

 リーダーは与えられた任務に着手する前に、必ず最初に「任務分析」を行う。全体の状況の中で、自分の部隊がどのような「地位」(立場)にあり、作戦全体の中でどのような「役割」を担っているのかを明確にするのだ。その上で、それを果たすために達成すべき「目標」を具体化して、その後の判断の基準にする。任務分析の内容を、メンバーと共有することで、行動のベクトルを合わせる。

 緊急事態であっても、任務分析を省くことは絶対にないという。立場と役割を見誤れば、その後のすべての行動が無駄になりかねないからだ。目的や目標を共有しておけば、細かい判断は部下に一任でき、現場状況に合わせた迅速で柔軟な行動が可能になる。

 任務分析の次に、現在の自分たちと敵の状況を把握し、任務達成にどのような影響が生じそうか分析する「見積もり」という作業をする。リーダーは、敵情(敵の情報)、人事(動ける人員や分担)、兵たん(使える装備や補給状況)など、それぞれの分野の担当者に「現況」を整理して数字を交えて報告させるとともに、現況を分析した結果、部隊の活動にどのようなリスクや制約、逆に有利な点があるのか、必ず「結論」を報告させる。

 リーダーはそれを基にして、目標を達成するための「行動方針」を決定する。大きな行動方針を決める際、自衛隊では必ず、特徴が異なる複数の案を作り、それをメンバーで比較検討した上で、結論を導くことがルール化されている。1つは作戦の盲点をなくすため。もう1つは、それぞれの行動方針の長所と短所を明確にするためだ。

 メンバーに行動方針の結論だけを伝えるのではなく、こうしたプロセスを共有することで、どの案に決まったとしても、メンバーは作戦の意図を理解した上で、その弱点を補いつつ、長所を生かすように意識的に行動できる。「チームをまとめる上では、結論以上にプロセスが大切」と、松村氏は強調する。

 最後の実行段階では、「指揮の要訣(ようけつ)」と呼ばれる3つのポイントを押さえる。

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