「同族企業について調べて、考え方が変わった」

ではその先、渡邉さんの後継者については、どうお考えですか。

渡邉氏:正直言って次の後継者のことなんて全く考えていません。今はとにかく会社をゼロからもう一回つくり直さなきゃならない。その上で、経営をどう渡したらいいのかを、もう一度考えます。

今年1月、長男の将也さん(32歳)が執行役員に就任し、海外事業を担当していますが、2月5日に新型コロナウイルスの影響で中国の「和民」業態の撤退も決めました。

(写真=尾関 裕士)
(写真=尾関 裕士)

渡邉氏:就任早々、試練と向き合っていますよ。彼は大学を出た後に、ヘルパーの資格を取って介護事業の現場に入り、外食事業での店長や店舗開発を経て、海外の仕事を担当していました。その後、うちの大株主のサントリーさんから「勉強しませんか」と声をかけていただいて、16年からまずは日本のマーケティング部門にいて、18年に(米蒸留酒大手の)ビーム(現ビームサントリー)のシカゴ本社に移り、マーケティングの部署でブランドマネジャーを担当しました。これまでにMBA(経営学修士)も取得しています。まあ、僕の息子じゃなくても、そういう経歴の人がいたら採りたいですよ。ゼロ歳から僕の後ろ姿を見て、経営理念が染みついていますし、これから非常に期待したいとは思っています。

渡邉さんの後を継いでCEOを担う可能性も当然あるわけですね。

渡邉氏:可能性はありますが、今は何とも言えませんね。本人の力次第だと思います。社員の幸せと会社の発展につながるようなら、なった方がいいし、そうでないならなるべきではない。以前、僕は世襲に対しては疑問がありました。能力がない人がトップに就いたり、子供に継がせることが会社の存在目的になってしまっていたりする会社を見てきたからです。ただ、議員時代に改めて同族企業について調べて、考え方が変わりました。

どういうことでしょうか。

渡邉氏:世界的に同族企業は、そうでない企業と比べて3倍の収益性を誇ります。創業家のトップであれば、創業理念も守りやすいし、オーナーとして短期的な収益にとらわれずに、長期的な視点で経営判断ができます。緊急ではないけど大事なことにお金を使う。つまり未来に投資できる。これが大きい。一方で、家業を守るために「ケチ」にもなれる。会社を長きにわたって成長させる上で、創業家の出身者に有利な点が多いのは事実です。すべてはリーダーとしての能力次第ですが、能力が同じなら、絶対同族の方がいいと思います。

 現在、ワタミの株式の約26%を私の資産管理会社が持っていますが、これ以上、株は絶対売らないと対外的に宣言しています。大株主がころころ変われば、会社の方向性がブレます。創業家が一定の株をしっかり持って、その創業家からしっかりとした方針が出され、未来図が示される。これは部下にとって最高に仕事がしやすい状況だと思います。

会長復帰と同時に、自ら策定された中期経営計画を発表しました。

渡邉氏:あのままいったら僕はワタミはつぶれていたと思います。これが、復帰して会社の中を見回してみた感想です。大事なのはここから10年、もっと言うとこの3年だと思っています。社員を含めてみんなで劇的に会社を変えようとしています。その成果が出るのが22年3月期。そして、29年3月期には売上高を(現状の2倍以上の)2000億円に引き上げて、サービス業で日本のリーダー的な存在にもう一度戻りたいと思います。

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