新型コロナウイルス感染症のワクチンの接種に関して、全米で最も厳しい義務化の規制が12月27日からニューヨーク市で始まる。対象が病院や学校などの公的機関の職員などから、一般の民間企業の従業員に拡大される。市内に拠点を置く日系企業の間に「事業が立ちゆかなくなる」と不安の声が広がっている。

 同市のビル・デブラシオ市長が義務化の構想を初めて発表したのは12月6日。詳細に触れないまま方針だけ表明したため、先の見えない不安から反対する市民によるデモが同日、市庁舎前で起きた。

12月6日にデブラシオ市長が民間企業の従業員へのワクチン接種義務化を発表。市庁舎前で市民によるデモが発生した(写真:ロイター/アフロ)
12月6日にデブラシオ市長が民間企業の従業員へのワクチン接種義務化を発表。市庁舎前で市民によるデモが発生した(写真:ロイター/アフロ)

 米国には「個人の健康に関わる選択は個人の権利」と考える層が共和党支持者を中心に存在する。ニューヨーク市は民主党優勢の地域だが、「どの職場にも接種を拒む人が一定数いる」(日系企業の幹部)のが実情。影響は避けられない。

 市が詳細を明らかにしたのは15日になってからだ。対象は2人以上が同じ空間で働く企業。ただし在宅勤務で他の従業員と全く接触しない人や、疾患など特定の理由がある人については対象外となった。27日までに少なくとも1回、その45日後までに2回目の接種を義務付ける。

「現場が回らなくなる」

 企業は27日までに、対象者全員がワクチンを1回以上接種していることを米疾病対策センター(CDC)が発行する証明書などで確認。市がサイトで提供する確認書に必要事項を記入し、公の見える場所に掲示する必要がある。確認書を掲示していても、当局の職員が見回った時に順守できていなければ、1000ドル以上の罰金の対象となる。

ニューヨーク市が提供する確認書
ニューヨーク市が提供する確認書
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 「なぜここまで……。たまったものではない」。ある日系銀行の幹部はこう頭を抱える。

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