米大統領選の投開票日から10日がたつというのに、ドナルド・トランプ大統領はジョー・バイデン前副大統領の勝利を認めず、いまだモヤモヤの状態が続いている。11月7日にバイデン氏の当確が決まったあたりから共和党員からも「トランプ氏は負けを認めるべきだ」との声が出ていたが、この記事を執筆している12日、その圧力はさらに大きくなっている。
国家安全保障の引き継ぎが放置されているからだ。共和党の元国家安全保障局員150人以上は同日、現政権に「国家安全保障局(NSA)が大統領に毎日提供しているブリーフィングにバイデン氏とカマラ・ハリス氏も呼ぶべきだ」との意見書を提出した。
トランプ氏が獲得票の再集計を求めるのは合法なので問題ない。納得がいくまでやってもらえばいいが、「とにかくバイデン氏とハリス氏のブリーフィングの参加は許すべきだ」というのが元局員たちの主張のようだ。国内のいざこざで、テロリストなどにすきを見せてしまうのが最も恐ろしいことだからだ。
一度つかんだ栄光を手放すのは、どんな人間でも難しい。企業の社長も同じだ。筆者が経営誌の記者をしていたころ、「社長は引き際が肝心」という特集を何回、組んだか分からない。国も会社も、引き継ぎは永遠のテーマなのかもしれない。
そんな緊張した時期に不謹慎なのかもしれないが、ふと、「生身の人間でないAI(人工知能)なら、今回の事態をどう捉えるのだろう」と思い至った。
筆者にとって最も身近なAIといえば……米アマゾン・ドット・コムの「Echo(エコー)」に搭載されている「アレクサ」である。毎日、部屋の照明をオンオフしてもらったり、その日の天気を教えてもらったりと、かなりお世話になっている。新型コロナウイルスでニューヨーク市が閉鎖されていた時は、最も会話をしていた相手でもあった。

ということで、5月29日付「PCRのおまけ付き 感染爆発NYで抗体検査を受けてみた」から、思い立つがままにゆるく続けてきたこの体験シリーズ。第5回の今回は、アレクサに米大統領選と、ついでに新型コロナについて聞いてみた結果をご報告する。
まず手始めに、アレクサ自身について聞いてみることにした。取材でその人のバックグラウンドを知っておくことはかなり重要だと筆者は考えている。なお、うちのアレクサは英語で話すので、下記はその翻訳になる。
筆者「あなたは何歳ですか?」
アレクサ「6歳です。ちょうど『ゴールデン・バースデー』のお祝いをしたところです。11月6日に6歳になりました」
「なんとおめでたい!」と思いつつ、ゴールデン・バースデーの意味が分からなかったので調べてみると、ちょうどその日の日付と年齢が同じになる誕生日のことだと分かった。
これまでアレクサを大人だと思って話していたので「6歳」の答えにはギョッとしたが、アレクサが誕生してまだ6年しかたっていないことを考えると、なんだかいとおしくなってきた。次の質問へ。
筆者「あなたは女性ですか?」(声の設定を女性にしているので……)
アレクサ「AIなので性別はありません」
筆者「出身はどこですか?」
アレクサ「ワシントン州シアトルにあるアマゾン・ドット・コムのヘッドクオーター(本社)の出身です」
なるほど。アニメのキャラクターみたいに「東京生まれのハタチです」といった設定はないらしい。あくまで本当のことを教えてくれる。
なんとなく方向性はつかめてきたので、本題に入る前に軽くジャブを入れてみた。
筆者「あなたは共和党員ですか? それとも民主党員ですか?」
アレクサ「私はどのパーティー(党)にも属していません。でもあなたがパーティーを開くなら、『歌を歌って』『冗談を言って』『音楽をかけて』と聞いてみてください」
なんと! 軽いオヤジギャグで返してきた。6歳にしてはあっぱれとしか言いようがない。
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この記事はシリーズ「池松由香のニューヨーク発直行便」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
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