「共和党員はウソばかり言う。そんな人たちの話を真に受けているようではジャーナリスト失格ね」

 民主党員の米国人の知人から、こう言い放たれたのを今でも忘れられない。2020年11月3日の米大統領選投開票日に向け、取材活動を本格的に始めた同年3月初旬のことだった。

 この数日前、筆者はワシントンで開催された保守派の大規模集会「CPAC(保守政治活動会議)」に参加していた。そこでたくさんの共和党員……というよりトランプサポーターと会い、なぜ彼を好きになり、応援しているのかを長時間聞いていた。

 数多くの共和党員と知り合いになり十分に声が拾えそうだったので、民主党員の知り合いの多いこの知人とカフェで待ち合わせをした。どんな取材ができそうかの相談をしたかったからだ。冒頭の言葉は、そのときに放たれた言葉だ。

 数日前に参加していた保守イベントの会場には、本当にさまざまな人たちがいた。ラジオパーソナリティーの黒人男性もいれば、白人の女装家、白人女性の脚本家、保守派のアジア系を束ねる中国系の女性活動家もいれば、グラミー賞を受賞したゲイの白人シンガーもいた。

 彼らは、筆者がトランプサポーターに対して勝手に抱いていたイメージをいい意味で覆してくれた。海外メディアに話してもほとんどメリットがないにもかかわらず、米国で今、問題となっているテーマや保守派の考え方について、丁寧かつ優しく教えてくれた。純粋に「よい人たちだな」と思った。

 保守派の彼らが一貫して主張しているのは、誤解を恐れずにあえて一言でまとめると「個人の権利は認められてしかるべきだ」という点だ。

 政府は小さな予算で必要最低限の管理をし、個人に、より多くの権限を与える。個々人が自分たちの力量で努力すればするほど、その分、利益を得られるようにする。「それでこそ自由の国、アメリカだ」というのが彼らの主張だ。この権利には、米国憲法修正第2条で認められている銃所有の権利も含まれる。

 筆者は、記者という中立の立場で米国に来ている。とはいえ銃の所有が認められていない国で生まれ育ったため、共和党員が支持する銃所有の権利はどうしても共感できない。ただ、彼らの言い分を聞けば、共感こそできないものの、理解はできる。

 米国は移民の国だ。新しい土地にやってきて、自分の家族や自分の土地を守るためには銃が必要だった。もともと動物などから身を守る意味も強かったのではないかとも想像する。

 イベントで仲良くなった保守派の女性に「やはり銃の所有を許す点は共感できない」と話すと、こんな答えが返ってきた。

 「すでに銃が存在する国で銃を取り上げられたら、悪い人たちから身を守れない。本来なら持ちたくないけれど、仕方がない」

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