(前回の「バイデン氏も想定外の『真犯人』 サプライチェーン混乱は長期化へ」から読む)

 マンハッタンから車で約30分。コンテナの港に行くのは初めてというウーバー運転手と、ハイウエーに乗り2つの川を渡ってニュージャージー港に向かった。現場が近づいてくると、ハイウエーを挟んで港の反対側にコンテナが積み上がっているのが見えた。

 「え? こんな所にコンテナが?」

 驚きを隠せないまま港に到着すると、ウーバー運転手までもが大きな声を上げた。

 「わ~、何だこれ! ソーメニー、ソーメニー(たくさん、たくさん)」

 その時に見た光景が下の写真だ。

コンテナの山、山、山。後で周辺にいたトラック運転手に聞き、すべて空のコンテナであることが分かった
コンテナの山、山、山。後で周辺にいたトラック運転手に聞き、すべて空のコンテナであることが分かった

 そこで車を降り、周辺を歩いた。ウーバーの運転手は取材が終わるまで待っていてくれると言っていたが、何台もの巨大トラックにクラクションを鳴らされてあきらめたようで、走り去った。

 空き地のような場所で給油していたトラック運転手に声をかけると、コンテナの山はすべて中身が空のもの(空コン)だと教えてくれた。「いつからこんなにたくさんあるの?」と聞くと、「数カ月前から」とのこと。会話をしながらも手を止めず急いでいる様子だったので、少しやり取りするも早めに別れを告げた。

 というのも、トラック運転手は「時間がおカネになる」ことを取材前の予習で知っていたからだ。

 米国では2018年4月から、トラックへの電子運行記録装置の設置が義務付けられている。トラック運転手の運転時間は1日最長11時間と定められているが、この規則を破って長時間運転をして事故を起こすケースが増えていたためだ。

 つまりトラック運転手は時限装置を抱えて仕事をしているようなものなのだ。時間切れとなれば何が何でもトラックを降りなければならない。たとえ、コンテナを探すためだけに時間を費やしていたとしても、だ。

 ある運転手は地元紙の取材に応え、シカゴの物流拠点があまりに混雑しているので「車中で並んで待っている間にサルサの踊り方の動画を見て覚えてしまった」と話していた。それほど業務上はムダな時間が発生しているわけだ。

 ウーバー車内から見たコンテナの山はフェンスの向こう側にあったが、トラックが時折、入り口から入っていくので、様子を探るためそこから歩いて入った。

 入り口の先にあった小屋で受付をしていた人に話を聞きたいと言うと、敷地の奥にあったプレハブの事務所を指さし「あそこで聞いて」と告げられた。

 行き交う巨大トラックをよけながらそこへ向かっていると、事務所から中年男性が慌てて走り寄ってきた。

 「キャン・アイ・ヘルプ・ユー?(ご用件は何でしょうか?)」

 どうやら筆者が歩いていたのはトラック用通路だったらしく、筆者の安全を気遣って走ってきてくれたようだった。

続きを読む 2/4 港湾勤務のジョンと遭遇、仕事がない現実

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この記事はシリーズ「池松由香のニューヨーク発直行便」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。