「僕にとってはベゾス氏もジャシー氏も同じ。倉庫で働くワーカーより会社の利益を優先する金持ちさ。でもジャシー氏には同情するよ。ベゾス氏が残した負の遺産と向き合わないといけないのだから……」

組合結成を目指して署名活動を続けるクリス・スモールズさん。すでに1500人の署名が集まっているという
組合結成を目指して署名活動を続けるクリス・スモールズさん。すでに1500人の署名が集まっているという

 9月下旬、ニューヨーク市にある「JFK8」と呼ばれる米アマゾン・ドット・コムの物流拠点の前で、元従業員のクリス・スモールズさんは静かに話し始めた。5カ月前から拠点最寄りのバス停前にテントを張り、労働組合結成を目指し署名活動を続けている。

 スモールズさんが解雇を言い渡されたのは2020年3月30日。市内で新型コロナの感染爆発が起き、拠点内でも数多くの感染者が出ていた。勤務中に具合が悪くなる人もいたが、スモールズさんによると濃厚接触者もそのまま勤務を続けていたという。「従業員の安全が確保されていない」。こう感じ、アマゾンの対策への抗議活動を展開した直後、スマホに電話がかかってきて解雇を通達された。

 それから1年半が経過した今、弁護士を付けて同社と複数案件で係争中だ。署名活動を始めて数カ月が経過したころ、テントと倉庫の間に2mは超えるフェンスが設置された。

 「こんなフェンスにお金を使うくらいなら、従業員に分け与えてほしい。僕たちが会社に求めているのは労働条件や環境の改善もあるけれど、まず互いの信頼関係の土台として話を聞いてもらえる場をつくってもらうこと。実現まであきらめない」

 アンディー・ジャシー氏は7月のアマゾンCEO(最高経営責任者)就任後、立て続けに従業員への福利厚生や労働条件の改善策を発表している。

 米国勤務の従業員の最低賃金を17ドルから18ドルに引き上げたほか、大学に進学したい従業員の学費や教科書などの関連費用を肩代わりする制度も新たに設けた。風当たりの緩和を目指しているのだろうが、「ジャシー氏になってから変わってきている」とスモールズさんも評価していた。

 米連邦政府からの締め付けも今後、厳しさを増しそうだ。法律大学院時代からアマゾンなどテック大手に対する反トラスト法(独占禁止法)規制強化を唱えてきたリナ・カーン氏が、ジョー・バイデン米大統領の指名で米連邦取引委員会(FTC)の委員長に就任。

エール法律大学院時代に現行の反トラスト法運用体制の欠陥を指摘したことで知られ、米連邦取引委員会(FTC)の委員長に就任した弁護士のリナ・カーン氏(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
エール法律大学院時代に現行の反トラスト法運用体制の欠陥を指摘したことで知られ、米連邦取引委員会(FTC)の委員長に就任した弁護士のリナ・カーン氏(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 カーン氏はアマゾンを含む大手テック5社による報告義務のない買収案件を調べ上げ、過去10年間で616件あったことを突き止めた。中には法の抜け道を利用し、本来は報告義務があっても報告せずにいた案件もあった。今後はそうした「穴」を埋める。

続きを読む 2/3 「分割論」の勢い増すか

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この記事はシリーズ「池松由香のニューヨーク発直行便」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。