
インドで最初に確認された新型コロナウイルスの変異ウイルスであるインド型(デルタ型)が、世界各地で猛威を振るっている。特徴は、元のウイルスに比べて2.25倍に上るとされるその感染力の高さ。米国でもアーカンソー州やミズーリ州、ルイジアナ州、ネバダ州などワクチン接種率の低い地域を中心にデルタ型の感染者が急増している。
「デルタ型が着実に流行し始めている。緊急事態だ」
アーカンソー州のエイザ・ハッチンソン知事は2021年7月12日、こう州民に警鐘を鳴らした。ニューヨーク・タイムズの集計によると、同州の1日当たりの新規感染者数は6月初旬まで200人にも満たなかったが、7月14日には1309人にまで拡大している。
同変異ウイルスは日本ではインド型とも呼ばれることも多いが、米国ではインド型という呼び方はしていない。中国を発祥とする新型コロナウイルスの流行後、米国内でアジア人への憎悪犯罪(ヘイトクライム)が増えたことから、ウイルスの名称に国や地域の名称を使わないよう配慮する動きがあるためだ。
ではこのデルタ型、世界の人々の健康や安全、経済活動をどれだけ脅かすものなのか。現時点で公表されている研究結果や報道をまとめると「脅威だが対策はある」といったところのようだ。
まず、なぜデルタ型は感染力が強いのか。
人体ですさまじい勢いで増殖する
米NPRの7月8日付記事によると、原因の一つはその増殖力の高さにあるようだ。
中国の広東省疾病対策予防センターの研究者は7月7日にオンラインで公表した研究結果で、デルタ型が元のウイルスに比べて人体の気管の中で急速に増殖する点を指摘した。同省でデルタ型に感染した62人と、元のウイルスに感染した63人の気管内を調べたところ、デルタ型のウイルスの数が元のウイルスに比べて1000倍に上ったという。
人体での増殖スピードが速いことから、感染者が他者に感染させるまでに要する期間も、元のウイルスが平均6日間であるのに対しデルタ型は同4日間と短かった。こうしたことから早い段階で感染者を見つけ出し、自主隔離などの対策を取ることが重要になる。幅広い検査の実施が鍵を握るわけだ。
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