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ワシントンの事務所からZoom会議で日経ビジネスの取材に答えるジョン・ボルトン前米大統領補佐官

 ドナルド・トランプ米政権で2018年4月~19年9月まで大統領補佐官(国家安全保障担当)を務めたジョン・ボルトン氏が20年6月23日、新著『The Room Where It Happened: A White House Memoir』を発表して話題になっている。発行元によると7月1日までに78万部以上を売り上げている。

 その内容はキヤノングローバル戦略研究所の宮家邦彦・研究主幹によるコラム「世界展望~プロの目」の記事でも取り上げた。578ページにも及ぶ本書の日本語版は「エージェントに頼んで発行元の選定をしているところだ」(ボルトン氏)と言い、近く日本でも発売される予定だ。

 「我々は恐ろしいウイルスに攻撃されている。そのウイルスは中国から来た」

 トランプ大統領は米独立記念日の20年7月4日、ホワイトハウスに集まった聴衆の前でこう演説した。新型コロナウイルスの感染者が各地で増え続ける米国で今、トランプ大統領のリーダーシップを不安視する人が急速に増えている。6月24日に発表された世論調査では、トランプ大統領の支持率が36%でジョー・バイデン前副大統領の50%を大きく下回った。

 怒りの矛先を中国に向けたいトランプ大統領。米中間で高まる緊張は、日本はもちろん世界各国の外交に大きな影響を与えそうだ。

 中でも注目が集まるのが北朝鮮の動向だ。トランプ大統領は米大統領としては異例の3度にわたり、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長と面会を果たしている。

 「オクトーバー・サプライズ」。ボルトン氏は11月に控える次期大統領選を前にトランプ大統領が、国民の人気を勝ち取るために何らかのサプライズを仕掛けるのではないかと予想する。その中身はいかに?

 ボルトン氏に米国、日本を取り巻くアジアを中心に国家安全保障にまつわる今後の見通しを聞いた。(インタビューの一部の動画を公開します)

このタイミングで書籍を出版した狙いを教えてください。トランプ大統領の再選を阻む目的があったのですか。

ジョン・ボルトン前大統領補佐官(以後、ボルトン氏):私は第43代ジョージ・W・ブッシュ政権を去った後も『Surrender Is Not an Option』という回顧録を出版しています。こうした回顧録は政権の職務から離れた後、なるべく早い段階で出版したいと常に考えてきました。書籍を作るプロセスには少なくとも4カ月はかかるので、今回はこのタイミングになりました。

 大統領がどのように考え、行動しているかは、次期大統領を選ぶ際の重要な判断材料になります。だから回顧録を発表するタイミングは候補者たちが選挙キャンペーンをしている最中が適していると思っています。

 もちろん歴史を記述して残すという目的もあります。米国の、非常に重要な国家安全保障にまつわる決断がどのようになされているかを国民に知らせることは、とても大切だと考えています。

今回の書籍もホワイトハウスに事前の内容チェックをしてもらっているのですか。

ボルトン氏:はい。国家安全保障にまつわる秘密事項が含まれていないかを検証してもらうのが目的です。トランプ大統領は、次期大統領選前に本書を出してほしくなかったようで、出版を差し止めようとしました。(東部時間の7月7日)現在、トランプ大統領のめいで臨床心理士のメアリー・トランプ氏が大統領に関する書籍を出そうとしていますが、それも差し止めようとしています。

 ただ私自身の意図は明確です。国の重要な決断がどのようなプロセスで行われているか、大統領の考えや行動を国民に知ってもらうため。国家安全に関わる秘密事項を暴露するのが目的ではありません。