「暗号資産(仮想通貨)っていったい何?」という素朴な疑問の答えを探し求めて始まった、この体験シリーズ「ドージコイン編」。

 初回の「それゆけドージ! 米国で仮想通貨を買ってみた」では、仮想通貨の基本を振り返りながら、筆者が実際に仮想通貨の一つであるドージコインを購入するまで、前回の「ドージコイン創始者ビリーさんと『かぼすママ』の感動秘話」では、解明できずにいた謎を解こうと創始者の1人、ビリー・マーカス氏(以下、ビリーさん)に連絡を取り、彼の母親が日本人で、子どもの頃は任天堂でゲームを作るエンジニアに憧れていたことなどを取り上げた。

 前回の記事の最後には、ビリーさんと、ドージコインのロゴになったシバイヌの飼い主とのエピソードを盛り込んだ。ロゴになったシバイヌは、米国で大人気ミーム(インターネットで拡散する面白ネタ)となったかぼすちゃん(下の写真)だ。かぼすちゃんはもともと、劣悪な環境で繁殖犬としてブリーダーに飼われていたが、ブリーダーの倒産で捨てられた保護犬だった。そんな彼女を殺処分前に引き取ったのが、その後、「かぼすママ」として大人気ブログを立ち上げる保育士の女性だ。

 ビリーさんに、かぼすママさんに連絡したことがあるかと尋ねると、返事は「ノー」だった。でもかぼすちゃんとかぼすママさんのことを尊敬しているとの回答が来たため、その回答を筆者からかぼすママさんへ伝えた。

 すると、かぼすママさんから驚きと感謝のメッセージと共に、こんな事実が告げられた。

 「昨夜、ドージコインに関する記事を読んでいて、ビリーさんのツイッターがわかって驚きました」

 「(かぼすちゃんの写真のNFTをチャリティーとして出品する)オークションの最中にNFTに対して反対する人達がにぎやかでしょんぼりしていた時に、私に元気を与えてくれたツイートをしてくれた方がいたのですが、なんとその方がビリーさんでした」

 筆者は「このメッセージはビリーさんに伝えなければ」と、再び伝書バトと化した。

ドージコインのロゴになったかぼすちゃんは現在、15歳。今も元気にお散歩を楽しんでいる(提供=かぼすママ「<a href="http://kabochan.blog.jp/" target="_blank">かぼすちゃんとおさんぽ。</a>」)
ドージコインのロゴになったかぼすちゃんは現在、15歳。今も元気にお散歩を楽しんでいる(提供=かぼすママ「かぼすちゃんとおさんぽ。」)

 かぼすママさんのメッセージをビリーさんに送ると、驚くほど瞬時に返事が来た。

 「Oh my gosh(なんてことだ)! このメッセージが僕にとってどんなに意味があることか……。いま、読みながら感情的になっています」

 「ネット上でかぼすママさんに向けられたたくさんのひどいコメントに、僕は悲しくなりました。彼女を守ろうとして、僕もたくさんの非難を浴びました。でもそれは、正しいことだからやったのです」

 「かぼすママは、そんないじめっ子全員が成し遂げたことを合算しても足りないくらい、たくさんの(善い)行いをしてきました。だから彼女はもっと尊敬されるべきなのです」

 この返事を見て、また泣きそうになった。ビリーさんはかぼすママさんを陰ながらずっと見守り、応援してきていたのだ。

 「Do Only Good Everyday(毎日善いことをしよう)」が合言葉のドージコインのコミュニティーは、そもそも創始者がこういう人柄だから生まれたのだと理解した。

 ちなみに筆者の質問状の「なぜドージコインには独特のコミュニティーがあるのか」に対するビリーさんの正式な回答は、こうだった。

 「誕生当初、人々はドージコインを(ネット上で)贈り合うことを楽しんでいました。マイニングが簡単で、誰かにチップとして送るのに好都合だったからです」

 「そんな寛大な精神から次第に人々は『誰かを助ける』といった目的のために団結するようになりました」

 「それが、単に(資産として)保有するだけでなく、誰かとシェアし、ドージコインや仮想通貨がなぜクールなのかを他の人に示すという独特の文化につながったのだと僕は思っています。そうした文化がドージコインには、初めから組み込まれていたように感じます」

 組み込み(embedded)という言葉を使うあたりが、なんともソフトウエア・エンジニアらしかった。ビリーさんは今でも継続的にドージオーナーたちにツイッターで、「面白いことや誰かの助けになるようなことにドージコインを使おう」と呼び掛けている。

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