一世一代の賭けに出たベゾス氏
価格を予想する前にぜひ知っておきたいのは、今回の初有人宇宙飛行がブルーオリジンにとって、ひいてはベゾス氏本人にとっても非常に重大な意味を持つことだ。
同社がイーロン・マスク氏率いる米スペースXと競争関係にあることは周知の通りだ。だが現時点で、ブルーオリジンはスペースXに大きく後れを取っている(関連記事)。
ブルーオリジンはまだ有人宇宙飛行を実現できていないが、スペースXは20年5月に初飛行を成功させ、その後、米航空宇宙局(NASA)の飛行士はもちろん、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の野口聡一飛行士や星出彰彦飛行士などを国際宇宙ステーション(ISS)に送り届けることに成功している。その乗り心地は、打ち上げ・帰還ともに「いい」と野口氏のお墨付きだ。
会社の持続的な成長には、NASAが進行中の宇宙開発計画について業務委託契約を勝ち取ることが欠かせないが、ここでもブルーオリジンはライバルのスペースXに水をあけられている。
スペースXは21年4月、NASAが人類を再び月に送る計画「アルテミス」で月面着陸機の製造委託先に選ばれた。契約金額は29億ドル(約3173億円)。同じコンペに参加していたブルーオリジンは選ばれなかった。
宇宙開発でこうした大口の契約を勝ち取ることは、資金だけでなく経験も得られるためさらなる技術力の向上につながる。契約を奪われれば奪われるほど、技術力に差がつき、勝ち取れる契約が減っていくのが宇宙産業の現実だ。
そこでベゾス氏は、自社の有人宇宙飛行の第1号に自らがなることで世界の注目を集め、安全性と技術力をアピールして大逆転を狙っているのだ。
まさに一世一代の大勝負。米アマゾン・ドット・コムのCEO(最高経営責任者)を直前に退任してから今回の飛行に挑むのも、自身に万が一のことがあった場合を想定してのことだろう。チケットを落札すれば、この勝負を目撃できるわけだ。
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