「やっぱりそうだった!」──。6日7日朝、メールをチェックしていて思わずこう声を上げてしまった。

 送り主は米宇宙開発ベンチャー、ブルーオリジンの広報担当者だった。7月に同社が開発したロケットで初めて挑む有人宇宙飛行に、5歳の時から「いつか宇宙に行きたい」との夢を抱き続け、同社を2000年に設立したジェフ・ベゾス氏本人も参加するという。

7月の有人宇宙飛行にベゾス氏(右)も弟のマーク・ベゾス氏(左)と共に参加することが分かった(写真:Blue Origin)
7月の有人宇宙飛行にベゾス氏(右)も弟のマーク・ベゾス氏(左)と共に参加することが分かった(写真:Blue Origin)

 この約1カ月前の5月5日、日本に一時帰国中だった筆者は同社がオンラインで開いた記者会見に参加していた。内容は、同社初の有人宇宙飛行を7月20日に実施し、6人乗り宇宙船の座席の1つをオークションで一般に販売するというものだった(日本経済新聞の関連記事)。

 会見でこんな質問が出た。

 「今回の飛行にベゾス氏本人が乗る可能性はあるのでしょうか」

 話の流れから、筆者を含め参加者の多くが頭に浮かべていた質問だった。同社の宇宙飛行販売責任者のアリアン・コーネル氏は、いかにも「平然を装っています」といった表情でこう回答した。

 「現時点では答えられません」

 この様子を見て「乗るんだな」と思ったものの、確証を得られずその時は記事にできなかった。

 ベゾス氏が乗り込むと明かされた今、5月に発表された「ベゾス氏の会社のロケットで行く宇宙飛行」のチケットは、「ベゾス氏と行く宇宙飛行」のチケットに“アップグレード”されたわけだ。

 ではこのランデブー、具体的にはどんなものになりそうか。またオークションでのお値段は? 5月の会見で得た情報をベースに飛行の詳細を見ていきつつ、その「お値段」を予想してみたい。

 まずは宇宙飛行の概要から。打ち上げ予定日は2021年7月20日。米テキサス州ヴァンホーン近くにあるブルーオリジンの施設から、同社が開発した再利用可能なロケット「ニューシェパード」で打ち上げる。

テキサス州の施設から打ち上げられる。ロケットの最上部のカプセルに飛行士たちが乗り込む(写真:Blue Origin)
テキサス州の施設から打ち上げられる。ロケットの最上部のカプセルに飛行士たちが乗り込む(写真:Blue Origin)

 チケットを落札した搭乗者(落札した人が別の人に権利を譲ることも可能だろう)は、打ち上げの4日前に現地入りし、緊急事態への対処法などの訓練を3日間にわたって受ける。落札者が宇宙船を操作することはないため操縦の訓練は受けないという。

宇宙船のインテリア。この空間にベゾス兄弟と乗り込む(写真:Blue Origin)
宇宙船のインテリア。この空間にベゾス兄弟と乗り込む(写真:Blue Origin)

 ただし搭乗には身体的な条件がある。体重は110~223ポンド(約50~約101キロ)で、身長は5フィート(約152センチ)~6フィート4インチ(約195センチ)まで。この条件に入っていない人は残念ながら今回の飛行には参加できない。なお、前出のコーネル氏によると、こうした条件はフライトを何回か重ねながら再検討を進めるという。

 打ち上げから着陸までは約10分間だ。上昇中の数分間は自身の体重の3倍、下降中の数秒間は同5.5倍の重力がかかるため、その重力に耐えられるというのも参加の条件になる。

 飛行船は打ち上げから約3分後にロケットから切り離され、海抜高度100キロメートルを超えて宇宙空間に突入する。そして、数分間の無重力状態を経て、パラシュートで地上に帰還する計画だ。

 下の動画は、ブルーオリジンが公開している試験飛行のもの。当日の様子に近いと考えられるため、これでベゾス氏との飛行を「疑似体験」していただきたい。

(動画:Blue Origin)

 飛行にはベゾス氏の弟であるマーク・ベゾス氏も同乗する。マーク氏はマーケティング会社を設立して06年に売却後、貧困層救済を掲げる米ロビンフッド財団の幹部に就任した。ニューヨーク市郊外のウエストチェスター郡では05年から「ボランティア消防士」をしていることでも知られる。

 なおベゾス氏はインスタグラムで、マーク氏を宇宙飛行に誘っている様子を公開している。動画から2人の仲の良さが伝わってくる。

続きを読む 2/3 一世一代の賭けに出たベゾス氏

この記事はシリーズ「池松由香のニューヨーク発直行便」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。