白人警官に首を押さえつけられて亡くなったジョージ・フロイドさんの死をきっかけに全米で巻き起こった抗議デモが、2020年6月7日で13日目を迎えた。デモは米国だけでなく英ロンドンやフランス・パリ、ドイツ・ベルリンなど世界各地に広がり、規模も巨大化している(ニューヨーク・タイムズがまとめた写真記事)。日本でも大阪で日本時間7日、抗議デモがあった。

ニューヨーク市内では7日も大規模集会が開かれた(写真:ロイター/アフロ)

 米国に拠点を置く企業はもちろん、世界でビジネスを展開するあらゆる日本企業にとっても決して無視できない状況になってきた。もはや「黒人差別」だけの問題でもなくなっている。人種に限らずあらゆる理由で差別を受けている人たちが「平等」を訴える一大ムーブメントに発展しつつあるからだ。

 グローバルに事業を展開しているなら、自社のウェブページ、ツイッターやフェイスブックなどのSNS(交流サイト)で問題について触れる必要はあるだろう。米国では大半の主要企業がこの問題について何かしらのメッセージを発信している。米国の消費者は今、企業がどう行動するかを観察している。

 ただ、やり方を間違えるとあだとなる。

 今回は、日米の企業がこの問題に対してどう対応しているか、またそれらに対して米消費者がどう反応しているかを見ながら、企業がこの問題と向き合う時のポイントを考えてみたい。

 なお、「『アメリカは暴力の上に生まれた』 NYで聞いた抗議デモの真意」でも触れたが、「抗議デモ=暴動」ではない。上記の記事を書いた米東部時間6月1日時点では米メディアも両者をさほど区別していなかったが、その週の後半くらいから両者を別扱いするようになった。

 フロイドさんの死や度重なる警官の暴力に対して抗議する人たちを「ピースフル・プロテスター(Peaceful Protesters)」、高級ブランド店や量販店、レストランなどで破壊行為や物品略奪に及ぶ人たちを「ルーター(Looters:略奪者)」と呼び、「デモ」と「暴動」の差をより明確にし始めている。

 略奪行為は現在、多くの地域で沈静化している。ニューヨーク市では6月2日頃から、徐々に治まってきた。3日にニューヨーク市警の警官3人がナイフや銃で襲われる事件があったが、犯人はアフリカ系米国人ではなく東欧からの移民で、反公安当局の思想を持つ人物だと地元では報道されている。一般の抗議者とは異なるタイプのようだ。

 もう一つ付け加えると、平和的な抗議活動は米憲法修正第1条で全ての国民に認められている権利だ。「選挙権」同様、民衆の声を政府に届けるための重要な手段として広く国民に認識されている。米国の民主主義を成立させる上で不可欠な要素の一つなのだ。そのため抗議デモに対して企業が賛同の意を表明しても、それ自体は何の問題もない。

ポイント1 どれだけ早く反応するか

 企業が差別問題への対応時に気をつけるべき第一のポイントが「スピード」だ。常日ごろ、この問題にどれだけ注意を向けているかを測る指標の一つになっている。

 日系企業ではソニーが早かった。現地5月31日午後5時過ぎにソニー米国法人のツイッターで、黒人コミュニティーとともに立つ意思表示をしている。


 ただ米企業に比べ日系企業は全体的に反応が遅い印象は否めない。米国の主要企業の多くは5月29~30日に何らかの行動を起こしている。

 例えば、米シティグループのマーク・メイソンCFO(最高財務責任者)は、フロイドさんの事件が起きた週の金曜日、5月29日にシティグループのブログで下記のメッセージを掲載している。メイソンCFOはアフリカ系米国人だ。

メイソンCFOが掲載したブログ

 メッセージの冒頭には、フロイドさんが首を押さえつけられていた間に発した「息ができません(I can't breathe)」という言葉を10回、並べている。そして、巨大企業の幹部である自身も、米国で黒人として生きていて日々、恐怖を感じることや、家族と何度も話し合った結果、表に出て自らの考えを話すべきだとの結論に至ったことなどをつづっている。

 同業では米ウェルズ・ファーゴも同日、チャールズ・シャーフCEO(最高経営責任者)が全社員に送った電子メールの内容を自社サイトで公開した。米JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOも同日、米国社員向けに本件に関する電子メールを送っている。

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