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 2020年5月25日、ミネソタ州ミネアポリスの店でたばこを買おうとしたジョージ・フロイドさん(46歳)。偽造の20ドル紙幣を使ったとして、警官4人に拘束された。無抵抗で警官の指示に従ったが、地面にうつぶせにされ、4人のうち1人の白人警官に膝で首を押さえつけられた。

 「息ができません、オフィサー!」

 フロイドさんはそう何度も訴えたが拘束は解かれず、やがて動かなくなった。押さえられていた時間は8分46秒。直後に死亡が確認された。フロイドさんはテキサス州ヒューストン出身のアフリカ系アメリカ人。新型コロナウイルスの感染拡大で、レストランでの仕事を失っていた。

 その全ては周囲にいた人によって動画に収められていた(ニューヨーク・タイムズの動画)。動画はSNS(交流サイト)などで拡散し、ミネアポリスから全米各地に抗議デモが広がっていった。

 ニューヨークでも、マンハッタンやブルックリンなど各地で抗議デモが行われ、特に5月30~31日の週末夜のデモは一部、暴徒化した。高級店が立ち並ぶマンハッタンのソーホーではシャネルやグッチ、ルイ・ヴィトンなどの店舗が攻撃され、商品などが強奪された。市内の別の場所でも、パトカーに火が付けられたり、警官が火炎瓶を投げつけられたりする場面も見られた。

 これを受けニューヨーク市では、6月1日午後11時から2日午前5時まで市民の外出を禁じる「外出禁止令(curfewと呼ばれるもので、新型コロナウイルスによるStay-at-home Orderとは異なる)」が出された。筆者がこの原稿を書いているのが1日の夜で、ちょうどその外出禁止時間に入ろうとしているところだ。

 1日午後3時半ごろから自宅近くのタイムズスクエアで抗議デモがあると聞き、現場に行って抗議者たちの声を拾ってきた。最初にお伝えしておくと、フロイドさんの死について抗議をしている大半の人たちは、平和的かつ純粋に活動をしている。

 暴徒化しているのは夜のみだ。逮捕者のほとんどが州外から来ているという。暴力的な抗議者の目的は、強奪や警官への暴行なのだろう。米メディアによると、この傾向は各地で見られているようだ。

 より過激な様子が世界中で報道されるが、決してそれが全てではない。むしろ昼間の抗議デモの方が米国社会の課題をより如実に表している。タイムズスクエアでの抗議デモの様子を写真と動画を中心にお届けする。

42丁目の通りを東へ行きブロードウェイで左折、タイムズスクエアに向かう。ちょうど警官が車道の封鎖準備を進めていた
店舗は強奪を恐れてか、木の板で窓ガラスを防御していた
警官が呼んだとみられる救急車が到着し、ホームレスとみられる男性が運び込まれていた。抗議デモのような群衆は見当たらない
テレビクルーを見かけたのでついていってみると、先ほどの救急車の奥に人が集まっているのが見えた。抗議デモはまだこの時点では小さな集まりだった
集団に近づいていくと、ベンチにもなるオブジェの上に立ち群衆の注目を集めている女性がいた。シャティーシャ・バーグさん(22歳)。抗議後にインタビューをして分かったのだが、どのアクティビスト団体にも所属せず、アーティストの友人2人と抗議活動に参加するためタイムズスクエアに来たという。大抵、デモはアクティビスト団体が組織的に実施するものだが、今回のデモは複数の団体や個人が自発的に集まったもののようだった
抗議者は黒人だけでなく白人やアジア系、ラテン系もいた
「Black lives matter(黒人の命も大切だ)!」と叫んでいる。先ほども登場したシャティーシャさんは「詩人(poet)」と言う。友人の男性はダンサーで、「呼び掛けをしていたら自然と群衆になった」と後で教えてくれた
黒人差別反対をテーマにした自作の詩を披露していたシャティーシャさんの友人。発言者が決まっているわけではなく、話したい人が壇上で話すという極めて平和的なものだった。発言者には白人もいた