2020年5月15日、著名投資家のウォーレン・バフェット氏が率いる米バークシャー・ハザウェイが、米ゴールドマン・サックスの保有株の8割を売却していたことが分かり、話題になっている。米銀株を好むと言われてきた同氏がゴールドマン株を手放したことは、米投資家たちに大きな驚きを与えた。

 同氏は5月2日に開いた年次株主総会でも、主要投資先だった航空会社4社の保有株を一気に手放したことを明かした。新型コロナウイルスの登場がいかに米社会を変えていくかを印象づけた一方で、新型コロナ発生後に売却したことから「さすがのバフェット氏も先を見通す目が鈍ったか」との声も出ている。

 だが地元誌の試算によると、ゴールドマン株からは50億ドルの投資に対して30億ドルの利益を得ており、「鈍った」とは言いがたい。米銀株もゴールドマンを手放す一方、米PNCファイナンシャル・サービシズ・グループの株は買い増しているため、米銀全体の未来を危ぶんでいるわけでもなさそう。方針転換と見るには時期尚早だ。

 いずれにしても、バフェット氏が大きく動いたことで市場が大騒ぎをするのは、それだけ投資家たちの同氏への信頼が厚い証拠でもある。

 そんな同氏が初めてオンラインで開いた5月2日の株主総会で発した「意味深」な発言も、投資家たちの間に波紋を投げかけている。

 「Never bet against America」

 アメリカに背くような賭けはするな、というものだ。バフェット氏は現在89歳。4時間半にわたった総会の冒頭の1時間半を割き、なぜアメリカに背く賭けはすべきでないかをとうとうと語った(ユーチューブの動画)。

会長を務めるバークシャー・ハザウェイの年次株主総会で4時間半にわたって熱弁を繰り広げたウォーレン・バフェット氏。新型コロナの感染拡大に配慮して株主は招かずオンライン中継で実施した。写真は2019年のもの(写真=AP/アフロ)
会長を務めるバークシャー・ハザウェイの年次株主総会で4時間半にわたって熱弁を繰り広げたウォーレン・バフェット氏。新型コロナの感染拡大に配慮して株主は招かずオンライン中継で実施した。写真は2019年のもの(写真=AP/アフロ)

 話はざっくり下記のようなものだ。

長期的に見れば「負けなし」の米国

 米国は国としては短いその歴史の中で数々の危機に直面し、そのたびに乗り越えてきた。働き盛りの男性の6%を失った南北戦争、1918年から世界で流行し米国内だけで67万5000人もの犠牲者を出したスペイン風邪、29年から30年代後半まで人々を苦しめ続けた大恐慌……。

 同氏の試算では、米国の「国の富」は1789年当時で10億ドル。現在は100兆ドルに上るため、231年間で米国は富を10万倍に増やした計算になる。

 「だから私はこれからもアメリカを信じ、死ぬまでアメリカに賭け続ける。どうか(皆さんも)アメリカに背くような賭けだけはしないでほしい」と訴えた。

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