中国が「コロナ対応」で落とした信頼

 いくつか理由がある。一つが、これまでのように諸外国との闘争にカネと労力を費やせるほどの体力が、世界のどの国にも残されていないことだ。

 米国とイランの闘争が落ち着く兆候があるのも、一つは両国に余裕がないからだろう。イランは中東の中でも大きな新型コロナの被害を受けている国。1日の新規感染者数がピーク時の3000人から1000人レベルに下がったため、4月下旬にバザールやショッピングモールを再開させた。だが、5月初旬に再び1日の新規感染者数が1500人レベルに増え、経済再開の難しさに直面している。

 中国とて余裕がない点では同じだ。国内の感染は今のところ収束しているとはいえ、諸外国で経済が停止している事実は「世界の工場」としてカネを稼ぐ中国に大きな痛手となる。

 また今回のパンデミックで、中国は先進諸国からの信頼を失ってしまった。新型コロナ発見直後の対応を誤り、その時のデータや情報を諸外国に伝えなかったことは、欧米諸国の反感を買っている。中国が「マスク外交」として各国に送ったマスクは粗悪品が多く、製造水準の低さも印象づけてしまった。

消耗戦を避け「均衡」で危機を乗り切る

 一方で、中国の広域経済圏構想「一帯一路」は、新型コロナで経済難に陥った国々で一定の成果を上げる可能性もある。

 となると見えてくるのは、新型コロナで経済難に陥った先進国は、世界で2番目の市場を持つ米国との取引を活発化し、早期の経済復興を果たそうとする。反対に資金力のない途上国などは、新型コロナで借りをつくった中国との関係を深めようとする。世界が米国と中国の旗の下に二分する格好だ。

 米中は互いに闘争を繰り返しても消耗するだけなので、必要に応じて関税を適度に掛け合い、自国の産業を守りながら国内改革に専念する。この絶妙な「均衡」が新たな米中関係の形になるのではないだろうか。

新型コロナ後の米中関係のニューノーマルは、互いの闘争に余計なカネと労力を使わない「均衡状態」ではないか
新型コロナ後の米中関係のニューノーマルは、互いの闘争に余計なカネと労力を使わない「均衡状態」ではないか
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 ここで疑問が湧く。中国はまだしも、世界一の感染爆発を起こした米国が果たして、コロナ後も先進国を率いる主導者として君臨し続けられるのか、という点だ。

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この記事はシリーズ「池松由香のニューヨーク発直行便」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。