新型コロナウイルスの感染拡大は人々の生活を一変させた。収束後もすべてが元に戻るわけではなく、人、企業、国などが営みを続けるうえでの新たな「常識」となって定着しそうなものも多い。各地で芽吹いている「ニューノーマル」を追う。米国編ではこれまで「大統領選の行方」と「雇用の創出」を取り上げてきた。今回は最終回として「米中関係」を取り上げる。

 2020年5月7日、意外なニュースが米国を駆け巡った。

 「米軍が中東からミサイル防衛システム『パトリオット』4基を引き揚げ、軍の人員規模も縮小する」というものだ。同日付のウォール・ストリート・ジャーナルによると、米軍の戦闘機2機も引き揚げたという。

 新型コロナウイルスの感染拡大が世界を苦しめる中、ドナルド・トランプ米大統領はイランとの敵対を強めようとしているとの報道がこれまでは多かった。イランのイスラム革命警備隊の小型艦艇が米国海軍の艦艇のすぐ横を通過したとの報告があった際には、4月22日のツイッターで「もしイランによる米海軍への嫌がらせがあったら艦艇を爆撃していいと指示した」と鼻息は荒かった。

 イランに対するトランプ大統領の方針は読みにくい。政権の中でも特に同大統領は、中東の駐在軍の規模縮小を望んできたと伝わる。一方で、1月上旬にはイラクでイラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官を殺害している。強い姿勢でイランに臨み、米国内の自身の支持層である「保守派」の愛国心を刺激しつつ、本心は軍よりも経済復興に力を注ぎたい、というのが本音なのかもしれない。

 このニュースには続きがある。現在、マーク・エスパー米国防長官は、新たな国防戦略に基づいて軍を再配備しているという。今回の引き揚げもその一環と考えられる。しかも、この新戦略で位置づけられている「米国の主要競争相手」は、中東ではなくロシアと中国だという。今後はアジアの緊張が高まると見ているようだ。

米中で世界を二分、断絶は深まる

 ポストコロナのニューノーマルを占うシリーズの第1回では、トランプ大統領は新型コロナの登場を機にこれまでの対中姿勢をいっそう強め、11月に控える大統領選の追い風にするだろうと予想した。国内の救済策で積み上がる政府の負債は「中国のせいだ」と補償を求め、対中関税でも厳しい姿勢を貫き票の獲得を目指す。

 だが一方で、国内は火の車だ。新型コロナで一気にしぼんだ需要が戻るまでには相応の時間がかかる。また第2回で触れたように、新型コロナを機に米国の産業界全体で環境投資へとかじを切るとするなら、産業構造の転換にしばらくは苦しむことになる。

 そんな中、対中関税を闇雲に追求すれば、自国の企業をさらに苦しめることになる。このことはトランプ大統領自身も18~19年の米中貿易摩擦で学んだはずだ。

 ここで現実味を帯びてくるのが、世界を「米国側」と「中国側」に二分し、必要に応じて互いに関税を掛け合う「米中均衡」という新たな形だ。これが、「労働階級総失業」と「産業構造の環境シフト」に続く、3つめのコロナ後のニューノーマルではないか。

新型コロナで米中関係はどう変貌するか(写真:ロイター/アフロ)
新型コロナで米中関係はどう変貌するか(写真:ロイター/アフロ)
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この記事はシリーズ「池松由香のニューヨーク発直行便」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。