ウォルマート側は「消毒など適切に対応」と主張 

 本件についてウォルマートにコメントを求めたところ、同社のスポークスパーソン、ランディー・ハーグローブ氏は「エバーグリーン・パークの店舗で2人の従業員が亡くなったことについて心を痛めており、ご遺族とともに喪に服します」とした上で、同社の主張を次の通り説明した。

 店舗内の主要エリアについてはこれまでも十分な洗浄と消毒を実施してきた。新型コロナの問題が起きてからは、さらに念を入れるため外部の洗浄会社を雇い、人の手が多く触れるモノ、例えば入り口やカート、レジ周辺、トイレ、食肉などが並ぶ生鮮食品エリアなどの洗浄・消毒をしている。

 また顧客と対面するレジにガードを設置し、顧客がソーシャルディスタンスを取るための目印を床に描き、一度に店内に入れる顧客の数も制限してきた。今後は、勤務する従業員の体温チェック、従業員にマスクや手袋を配布するなど、対策の強化に努めていく。

 そして最後に「当社はこの問題を真摯に受け止め、裁判所で適切な対応をしていく」と結んだ。

感染場所が「店舗」と言い切れるか

 日本でも一部小売店で従業員によるストライキが起きているとみられる状況がSNSで話題になるなど、こうした事態はひとごとではなくなってきた。未曽有の危機の中、こうした訴訟リスクを回避するために企業はどう備えればいいのか。バージニア州のリッチモンド大学ロースクールで大規模不法行為(多くの人に影響を与える不法行為)を教えるカール・トビアス教授に、ウォルマートの訴訟が抱える争点と企業が備えるべきポイントを聞いた。

 トビアス教授によると、この訴訟の最大のポイントは原告側が「エバンス氏がどこで新型コロナに感染したか」を証明することにあるという。そもそも感染場所が店舗でなければ、それが原因で死亡したとは言えないからだ。

 トビアス教授の見解は「不可能ではないが、証明するのはとても難しい」というものだ。「新型コロナのウイルス感染は店舗でなくても、勤務先に向かう途中など、どこででもあり得る。裁判では感染場所を特定する必要があり、この証明は、不可能ではないがとても難しいものになるだろう」と説明する。

 この点については、マカフィー・アンド・タフト法律事務所のジェーソン・マックビッカー弁護士も同意する。ただ、「エッセンシャルワーカーを雇う企業は(他の企業に比べて)法廷でより深く検証されることになるだろう」と見る。

 というのも、都市が閉鎖状態にある中、食料品店やガソリンスタンドなどで働く人たちは明らかに、他の人たちよりも大きな感染のリスクにさらされているからだ。

 では、具体的にどうすればいいのか。

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3/14、4/5ウェビナー開催 「中国、技術覇権の行方」(全2回シリーズ)

 米中対立が深刻化する一方で、中国は先端技術の獲得にあくなき執念を燃やしています。日経ビジネスLIVEでは中国のEVと半導体の動向を深掘りするため、2人の専門家を講師に招いたウェビナーシリーズ「中国、技術覇権の行方」(全2回)を開催します。

 3月14日(火)19時からの第1回のテーマは、「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」です。知財ランドスケープCEOの山内明氏が登壇し、「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」をテーマに講演いただきます。

 4月5日(水)19時からの第2回のテーマは、「深刻化する米中半導体対立、日本企業へのインパクト」です。講師は英調査会社英オムディア(インフォーマインテリジェンス)でシニアコンサルティングディレクターを務める南川明氏です。

 各ウェビナーでは視聴者の皆様からの質問をお受けし、モデレーターも交えて議論を深めていきます。ぜひ、ご参加ください。

■開催日:3月14日(火)19:00~20:00(予定)
■テーマ:「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」
■講師:知財ランドスケープCEO 山内明氏
■モデレーター:日経ビジネス記者 薬文江

■第2回開催日:4月5日(水)19:00~20:00(予定)
■テーマ:「深刻化する米中半導体対立、日本企業へのインパクト」
■講師:英オムディア(インフォーマインテリジェンス)、シニアコンサルティングディレクター 南川明氏
■モデレーター:日経ビジネス上海支局長 佐伯真也

■会場:Zoomを使ったオンラインセミナー(原則ライブ配信)
■主催:日経ビジネス
■受講料:日経ビジネス電子版の有料会員のみ無料となります(いずれも事前登録制、先着順)。視聴希望でまだ有料会員でない方は、会員登録をした上で、参加をお申し込みください(月額2500円、初月無料)

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