ツイッターの大株主となったマスク氏(写真:AFP/アフロ)
ツイッターの大株主となったマスク氏(写真:AFP/アフロ)

 米国時間の2022年4月4日午前7時34分、筆者のアップルウオッチに日本経済新聞の速報が表示された。

 「マスク氏がTwitter株の9%取得、約3400億円相当」

 マスク氏とはもちろん、米テスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)のことだ。「エーッ」と思わず声が出たものの、次の瞬間、合点がいった。というのも同氏のツイッターアカウントをフォローしている筆者は3月25日、下記のような投稿を見ていた。

マスク氏の3月25日の投稿
マスク氏の3月25日の投稿

 マスク氏は「民主主義の機能に言論の自由は必要不可欠だ」としたうえで、「あなたはツイッターがこの原則を順守していると信じるか?」とユーザーに「Yes/No」の投票を呼び掛けていた。

 4月4日現在の結果は、Noが7割以上でYesの3割弱を大きく上回っている。他社の経営者であるにもかかわらず「ツイッターの経営陣に物申す」といった姿勢に少し違和感を覚えていた。

 眠い目をこすりながらすぐパソコンを開き、地元メディアの報道をチェックした。第一報を流したのは米ブルームバーグだったようだ。記事の日付は4月4日で、時刻は午前6時26分。マスク氏がツイッターの株式9.2%を取得し、同社最大の株主になったと書かれていた。

 情報元はマスク氏本人。正確に言うと、同氏が米証券取引委員会(SEC)に同日付で署名し、公開された書類「13G」である。

 「13G」とは、会社の5%以上の株式を取得、かつその会社の経営に影響を及ぼす意図がない場合に提出する書類だ。会社への影響力を望まないため書類に記す情報も簡易で済む。もし影響力を持つ意図がある場合は、取得の目的など詳細を記載する「13D」を提出するのが一般的だ。

 マスク氏が提出した13Gによると、同氏が実際に株式を取得したのは3月14日で、署名の21日(3週間)前だ。だがSECには、会社の普通株5%以上を購入した場合、10日間以内に必要書類を提出し、取得したことを公開しなければならないという規則がある。11日間も提出が遅れたわけだ。

 これを受け、米CNBCは何かとSECと対立することの多いマスク氏を念頭に「SECがマスク氏を追及する理由がもう一つ増えた」とする記事を掲載した。

 ここでこんな疑問が湧いてきた。「なぜ情報公開が4月4日だったのか」という点である。

 同じCNBCの記事によると、10日間の規則を守らなかった場合の罰則は歴史的にそれほど厳しくなく、あっても10万ドル程度の罰金だという。一般市民にとっては破格の額だが、ブルームバーグの「ビリオネア(億万長者)インデックス」で1位(4月4日時点)のマスク氏にとっては微々たるものかもしれない。とはいえ、何もメリットがないのに遅らせたとも考えづらい。

 別に理由があるとすれば……筆者には1つ、思い当たることがあった。

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