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 2020年3月30日午前11時(米東部時間)、ニューヨークのビル・デブラシオ市長はマンハッタンの西側を流れるハドソン川の波止場で1隻の船を待ち構えていた。

 全長272m、全幅は32mの巨大な米海軍病院船「コンフォート」。通常は戦地での傷病軍人の治療や災害の被災者救助などを任務とするが、今回は新型コロナウイルスの感染者が爆発的に増えているニューヨークで医療活動に従事するため赴いた。

ハドソン川を上り、ニューヨーク市マンハッタンの波止場に向かう米海軍の病院船「コンフォート」を出迎えるニューヨークのビル・デブラシオ市長(写真:Michael Appleton/Mayoral Photography Office)

 米国土安全保障省(DHS)内に設置されている米連邦緊急事態管理局(FEMA)が派遣した。非常事態用に確保されている米連邦政府の予算を使うため、治療は無料だ。患者の受け入れなどは、州や市の保健局や地元の病院と連携しながら進める。同船がニューヨークにやってきたのは2001年の同時多発テロ以来、19年ぶりのことだ。

 「米軍に助けてもらえるのだからもう大丈夫。そんな安堵感があった」

 入港後の会見でデブラシオ市長は、船を出迎えた時の心境をこう振り返った。米政府が所有する病院船はコンフォートの他、27日にロサンゼルスに入港した「マーシー」の2隻しかない。いずれも巨大な軍艦に1000の病床と12の手術室を備える「水に浮かぶ病院」だ。

2020年3月26日、出港準備のため患者用ガウンを数えるドム・ナバロ隊員。写真はロサンゼルスに向かった病院船「マーシー」の中

 全米各地で感染者数が急増する中、まずはニューヨークが貴重な2隻のうちの1隻を使用できるわけだ。だが、デブラシオ市長の顔に笑みはない。

 「病院船を送ってもらったことには感謝している。だが、闘いは始まったばかりだ。これからの数週間、我々はもっと厳しい状況に直面することになる」