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 米国で新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。米ジョンズ・ホプキンス大の集計によると、米国東部時間の2020年3月26日午後10時現在、米国の感染者は8万5486人で、中国やイタリアを上回った。死者が1282人と1000人を超えている。そのエピセンター(震源地)となっているのがニューヨークだ。同州では25日だけで100人が死亡し、26日午後10時現在の死者数は365人に上った。

 医療現場が大量の患者をさばききれなくなる「オーバーシュート」が近いとされるニューヨーク。その医療の現場は今、どんな状況に置かれているのか。米コロンビア大学メディカルセンター循環器内科助教授の島田悠一医師に実情を聞いた。同院はニューヨークで2番目に確認された感染者が入院していた場所でもある(関連記事「握手代わりに肘タッチ NY流、新型コロナとの向き合い方」)。

ニューヨーク市内の病院に設置された新型コロナウイルスの検査施設で指示を送る医療従事者(写真:AP/アフロ)

新型コロナウイルスの感染拡大で、医師の状況はどのように変わりましたか。

島田悠一医師
2007年東京大学医学部卒(在学中に米国医師免許を取得)。旭中央病院、東京大学病院で初期研修後、ベス・イスラエル病院にて内科研修医、主任研修医として勤務。12年よりハーバード大学医学部付属ブリガム・アンド・ウイメンズ病院循環器内科専門研修医。一般内科と循環器内科の専門医を取得する傍らジョンズ・ホプキンス公衆衛生大学院修士課程を修了し、公衆衛生学修士号(MPH)を取得。15年からハーバード大学医学部付属マサチューセッツ総合病院で循環器内科指導医、17年からコロンビア大学メディカルセンター循環器内科助教授・指導医。海外留学を目指す医師向けの著書として『米国医学留学のすべて』『海外医学留学のすべて』(日本医事新報社)がある。

島田悠一医師(以下、島田):循環器内科は心臓や血管に関連する疾患を診る科なので、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の患者さんを直接、主治医として治療する機会は多くはありません。ただ、循環器内科にはコンサルトチームというものがあり、当院に来院した患者さんで循環器内科に関連した症状が見られる場合は、あらゆる科からこのチームが呼び出され、診療をします。たまたま今月と来月(2020年3~4月)は私がその循環器内科コンサルトチームの担当をしているので、ER(救命病棟)やICU(集中治療室)でCOVID-19の患者さんを毎日、数多く診ています。

編集注:ニューヨークで初めて新型コロナの感染者が確認されたのは2020年3月1日だ。

 状況がガラッと変わったのは、この1週間だと感じています。ERやICUにはCOVID-19の患者さんがあふれています。現時点ではなんとか医療従事者の人員は足りていますが、やがて人員も足りなくなるでしょう。当院でも、毎日のようにCOVID-19の患者さんが亡くなっていますし、「イタリアのようにオーバーシュートになる日も近い」と感じています。

 とにかく防護具が足りません。私たち医師はこうした感染症の患者さんを診るとき、感染を防ぐために「N95」と呼ばれる特別な医療用マスクや、フェースシールド、ガウンなどを着用するのですが、この防護具が現時点ですでに不足しているので、病院から「節約してほしい」との指示が出ています。

通常はどのくらいの頻度で取り換えるのでしょうか。

島田:本来は患者さんを1人診察するごとにマスクを換えなければいけません。我々医師の感染を防ぐという意図もありますが、主に患者さん同士の感染を防ぐ狙いがあります。でもCOVID-19の患者さんが増えてからは、1人ずつN95マスクを換えていてはすぐに足りなくなるので、いろいろな工夫をして、汚れていなければ何日も使うようにしています。

何日も、というと?

島田:現在は月に2つを使うくらいに節約しています。もちろん患者さん同士の感染を防ぎたいので、N95の上に別の使い捨てマスクをかぶせて使い、その使い捨てマスクだけ取り換えるようにと病院から言われています。現時点でも足りていないのに、ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事が言っているように、さらにこれから患者数が増えるとしたら……。こういった状況は、ニューヨークのどの病院でも同じだと思います。