「米国はイタリアの11日遅れの状況にある」──。ハーバード大学薬学部のアサフ・ビットン准教授が、新型コロナウイルスのパンデミックに関するこんな記事を米オンライン・メディア「ミディアム」に発表したのは、2020年3月13日のことだ。記事でビットン准教授は「このままでは米国はイタリアがたどったのと同じ道をたどる。これからの1週間、我々がどう行動するかが極めて重要だ」と警鐘を鳴らした。

ハーバード大学薬学部准教授で、プライマリーケア(初期医療)を専門とする。同大医学部のブリガム・アンド・ウイメンズ病院でアシスタント・メディカル・ディレクターも務める。
ジョンズ・ホプキンス大学の情報サイトによると、米国東部時間の3月22日午後10時現在で米国の感染者数は3万3276人、死者数は417人に上った。イタリアは感染者数が5万9138人、死者数が5476人。イタリアの死者は22日だけで793人と、過去最大を記録した。
現時点で米国の感染者数は、イタリアを上回る勢いで増えている。この1週間で急速にテスト件数を拡大していることも影響しているだろう(米疾病対策センター=CDC=の関連資料)。
専門家たちの「叫び」は、米国の政治家たちを動かした。16日にサンフランシスコ市が市民の外出を基本的に禁じる「shelter-in-place order(外出禁止令)」を発令。19日にはカリフォルニア州が同様の外出規制「stay-at-home order」を出すと、20日にはニューヨーク州、イリノイ州とコネティカット州、21日にはニュージャージー州が続いた。その後も導入する地域が増え続けている。
「状況が深刻な都市や州が次々と厳格な対策を採用し始めたことで、死亡率の高いイタリアのような状況を防げる可能性が出てきた。間に合うかもしれない。ただ、もっと大規模な動きにしていく必要はある」。ビットン准教授は電話取材に応じ、米国の現状をこう評価した。
Powered by リゾーム?