日本の「一斉休校」、不満は解消できる?

日本では政府の要請を受け全国の多くの小中学校などが休校となっています。こうした対応をどう見ますか。

ジェイミソン氏:私は日本の状況について詳細を追っているわけではありません。知っているのは記事に載っている程度のことですが、これを前提に言えるのは、(全国規模の)休校によって「共働きの家庭などに計り知れない弊害が出る」ということです。

 先ほどの米国の事例でも触れましたが、その人の経済状況はその人の判断を左右し、ひいてはその人の人生を変えます。それを前もって考慮することで改善策が見えてきます。

 休校になれば共働きの家庭では子どもの面倒を見る人がいなくなるので、例えば、北海道のおばあちゃんに東京に出てきてもらって面倒を見てもらう必要が出てきます。あるいはどこかの施設で子どもを見てもらうなど、何らかの出費が必要になってきます。

 その結果、不満が出てくるのは当然のことです。政府としてできるのは、その不満を少しでも和らげるにはどうすればいいかを考えることでしょう。おばあちゃんが東京に出てこなければならないのはなぜなのかを説明して理解してもらい、旅費を支援するなどすれば不満も和らぐでしょう。

日本では人々がドラッグストアなどに殺到し、トイレットペーパーなどを買い込んで商品が店頭から消えるという現象が起きていました。今でもマスクは品薄と聞いています。こうした状況を緩和する方法はないのでしょうか。

ジェイミソン氏:人々が必要なものを買いに走るのは自然な行動だと思うので、政府ができることは非常に少ないでしょう。私の娘はニューヨークに住んでいますが、手の除菌グッズが店頭から消えて買えなくなり、(自宅待機に備えて)食料の在庫を増やしているとも言っていました。こうした行動を他人が変えることは不可能です。

 ただ、必要な物資を必要な人たちの手元にちゃんと届くように政府が支援する方法はあります。今、米国でもマスクが品薄になっていますが、例えば、政府がメーカーに「3月25日までの期間、生産量をこれだけ増やしてくれたら売れ残っても政府が買い取りを保証する」などと約束すれば、市場への供給量を増やすことができます。メーカーが恐れるのは、生産増に踏み切った後に急速に需要が減って、売れ残るリスクです。このリスクを政府が肩代わりすることで、物資がちゃんと市場に行き渡るのを助けることができるでしょう。

オーバーリアクションVS.アンダーリアクション

米国では政府やメディアが「パニックになる必要はない」と盛んに呼びかけています。また感染を防ぐ方法も、20秒以上の手洗いを徹底し、外で何かを触った手で顔に触れない、握手ではなく肘(ひじ)タッチなどに変える、など一貫していて、学校の休校も感染者が出た地域などに限定しています。日本は少し行き過ぎとの見方もありますが、どう思いますか。

ジェイミソン氏:個人的にはちょっとオーバーリアクション(過大反応)のような気もしますが、現時点で何が正しい判断なのかを結論づけることはできません。きっと、2年後くらいに明らかになるのでしょう。

 私自身は経済学者で科学者ではないのですが、科学者の友人は「感染の拡大時期においては、アンダーリアクション(過小反応)よりもオーバーリアクションの方がいい」と言っています。健康を優先するなら、念には念を入れてオーバーリアクションをするくらいでちょうどいいというわけです。安倍首相が国民の健康を優先したのは明らかです。

 一方で、休校などの対策を打てば、国民の経済活動にマイナスのインパクトを与えるのも明らかです。立ち位置によって意見は異なるし、これからどの程度、新型コロナの感染拡大が深刻化するかによっても変わってきます。これからどんどん感染者が増えて、世界の人口の2%の命が奪われたら……。「結論が出るのは2年後」と先ほど言ったのは、こうした理由からです。

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