「触る必要のない場所を手で触るのはやめましょう。咳(せき)をするときは肘(ひじ)で口元を覆いましょう。頻繁に手を洗いましょう。洗うときは、少なくとも20秒以上の時間をかけましょう。皆で協力してニューヨークを安全な場所にしましょう!」

 グランドセントラル駅からのバスでは、今まで聞いたことのなかった、こんなアナウンスが流れた。市内を走るバスを運営するメトロポリタン・トランスポーテーション・オーソリティー(MTA)は、こうしたアナウンスに加え、地下鉄やバスの車両を72時間ごとに除菌することを決めた。食料品スーパーや一般の小売店、企業が入居するオフィスビルなどでも、レジや出入り口近くに除菌シートやジェルを設置するところが増えている。

グランドセントラル駅近くのコスメ店。レジに除菌ジェルのボトルを置いていた
グランドセントラル駅近くのコスメ店。レジに除菌ジェルのボトルを置いていた

 ニューヨーカー(たぶん米国中の人)がこれほどまで手の除菌にこだわるのは、テレビなどでヘルスケアの専門家たちが「新型コロナから身を守る方法」を連呼しているからだ。この数日間、何度、「外でいろんな物を触った手で顔(特に口、鼻、目)を触らない」「手を頻繁に洗う。洗うときは20秒以上」という注意喚起を聞いたか分からない。

危機をもアメリカンジョークに変える

 例えば、ニューヨーク・タイムズの記事には、こう書かれている。

  1. 常に手を清潔にすること。症状のある人とは距離を取ること
  2. 症状が出たら自宅で待機すること
  3. 感染していなければ、マスクをしても意味がない
  4. 薬や食料などの生活必需品は在庫を確保しておく。30日分くらいが目安
  5. 家族といざというときの計画を共有しておく
  6. 子どもを不安にさせないようにし、インフルエンザのワクチンを受けていなければ受けさせる
  7. 株式市場が気になる? なら深呼吸を(筆者注:これはアメリカンジョークです)

 報道だけではない。筆者が好きなテレビ番組にCBSで深夜に放送されている「Late Show」というトーク番組がある。ニューヨークで制作されている番組だ。このホストとゲストの俳優が3日、握手した後に互いにおもむろに除菌ジェルを取り出し、「悪いがあなたは信用できない」と言いながら手にもみ込んでいた。もちろんこれもアメリカンジョークだが、楽しく、今、すべきことを一般に伝えようという制作側の意図を感じた。

 別のニュース番組では、アナウンサーとゲストのヘルスケア専門家が握手の代わりに肘をぶつけ合ってみせていた。これもウイルスを拡散させないための対策だ。米国でのあいさつは握手やハグ、キスなどをするのが一般的だが、各メディアが「あいさつは肘をぶつけ合ったり軽く会釈したりしよう」と呼びかけている。

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