「不安だ」と日本にいる友人から連絡があった。店頭からトイレットペーパーなどが消え、週末にはドラッグストアに行列ができるという。震災直後に似た状況だと想像する。職場では「くれぐれも感染しないように」と何度も注意喚起があるため、自分が火種になってはいけないと緊張した日々を過ごしているらしい。

 日本の状況を友人や知人から耳にするたび、「国によってこうも反応が違うのか」と驚かされる。そして、「ニューヨーカーたちがこの危機をどう乗り越えようとしているかを伝えたい」と考えるに至った。

 ニューヨークにも新型コロナウイルスの脅威はやってきている。3月1日に初の感染者が見つかると、3日朝には2人目の感染者が見つかった。それまで通常と変わらない日々を送っていたニューヨーカーたちも、2人目の感染者が報告されるとある行動に出始めた。除菌ハンドスプレーやサニタリージェルといった除菌グッズをドラッグストアなどに買いに走ったのだ。

 2人目感染の報道直後の3日昼ごろ、マンハッタンの筆者自宅近くのドラッグストアや食品スーパー、コンビニエンスストアなどを6軒ほど巡り、欠品状況を確認した。ハンドスプレーはどの店にもなく、除菌シートが残っていたのが4軒、除菌ジェルの在庫があったのが1軒だった。ところが4日昼に同じ店に行くと、シートもジェルも売り切れていた(このうち1店舗では5日、シートのみ店頭に在庫が戻っていた)。

 ただ除菌グッズ以外の商品は、通常通りの状況だった。コロナにまつわる街での差別や混乱も現時点では見かけていない。

 ではニューヨークが新型コロナにおいて日本に比べて安心できる状況にあるかというと、そうではない。密集度からすると、かなり注意すべき状態にあると言えるだろう。マンハッタンは東京の山手線内にすっぽり入るくらいのサイズだが、そのマンハッタンと周辺地域で5日現在、22人の感染者が確認されている。

 また同日、ニューヨーク市は2773人に14日間の自主隔離を要請していると発表した。そのほとんどは中国、イタリア、イラン、韓国、日本といった感染拡大が深刻化している国々から帰国したばかりの人たちだ。「voluntary home isolation(自発的な自宅での隔離)」と呼ぶもので、外出はできるだけ控えることが推奨されているが、症状が出ていなければ外出もできる。感染拡大前に「芽」を潰す戦略で、ビル・デブラシオ・ニューヨーク市長は「これでも封じ込めることができなければ大きな集会などを抑制する可能性もあるが、現時点ではまだその段階には至っていない」としている。

 状況を大きく変えたのが、先に触れた2人目の感染者の発覚だった。

弁護士一家の周囲が次々と感染

 1人目の感染者は、イランから帰国したばかりのヘルスケア関連の仕事に従事する30代の女性だった。仕事柄なのだろう。自身で感染の可能性を察知し、帰国した空港から自宅のあるマンハッタンに戻るまで公共交通機関を使わずに移動。症状は軽かったものの病院でテストを受け、陽性が確認されるとすぐに自宅での14日間の「self-quarantine(自身による隔離)」に入った。この女性の夫もヘルスケア関連の仕事をしており、女性とともにイランに行っていたが、4日までに陰性であることが確認されている。

 問題は2人目だった。マンハッタンの北に位置するニューロシェルという地域に住む50歳の弁護士だ。勤務先の法律事務所は、マンハッタンの中心地にあるグランドセントラル駅の目の前にあり、そこに毎日電車で通勤していたという(下の写真)。

左手がグランドセントラル駅で、右手が2人目の感染者が勤務していた弁護士事務所の入る建物だ
続きを読む 2/4 「除菌が全て!」のニューヨーカー

この記事はシリーズ「池松由香のニューヨーク発直行便」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。