「本当に彼は次期大統領選に出馬できるのだろうか」
ジョー・バイデン氏が米大統領に就任してから1年が経過し、米国民の間にこんな懸念が広がり始めている。
新しい変異型が次々と登場する新型コロナウイルス、止まらないインフレーション、グローバル供給網の逼迫、緊張の高まるウクライナ情勢……。難しい問題が山積する中、米国民がかねて心配しているのはバイデン氏の健康状態だ。ただでさえ迅速かつ的確な判断が求められている状況下、少しの判断ミスが米国、ひいては世界を窮地に陥れかねない。
筆者も2020年の大統領選のときから同じことが気になっていた。勝利宣言をする前に舞台の上を小走りする姿は「無理に健康をアピールしている」ように見えたし、テレビ討論会で発言が滞る様子も年齢を感じさせた。
21年の大統領就任後、その傾向はむしろ強まった。足元がおぼつかなくて飛行機のタラップでつまずいたり、記者会見で言い間違えをしたり。22年2月現在の年齢は79歳。筆者の父と同じ年齢だが、父のほうがむしろ元気に映る。
いつか生でバイデン氏を見ることができたら疑念は晴れるのではないか──。そんなことを考えていたちょうどそのとき、絶好のチャンスが訪れた。2月3日に銃規制強化の方針を訴えるため、ニューヨーク市にバイデン氏がやってくるという情報が入ったのだ。
「よしっ、バイデン氏を見に行こう!」
ということで今回の「体験シリーズ」は、ホワイトハウスから届いた1通のメールから始まる。
メールが届いたのは2月2日の午後2時前だった。タイトルに「メディア・アドバイザリー:ジョー・バイデン大統領のニューヨーク訪問」とあった。
「おおお? もしや!」
開いてみると、ジョン・F・ケネディ国際空港のとある場所に3日午前11時ごろにバイデン氏が到着すると書いてあった。取材が許される媒体も「オープン」。つまりどんなメディアでも許可さえ取れれば参加できるわけだ。「これは行かなければ!」と、思わず自宅でガッツポーズをした。(笑)
読者の皆さんはともすると、「メディアの人なら誰でも大統領の記者会見に参加できるのではないか」と思っているかもしれない。筆者自身も赴任してから知ったのだが、「大統領番」を配置する新聞やテレビ以外のメディアが、ホワイトハウスや米議会が開く記者会見に参加できる機会はほとんどない。そもそも登録者リストを管理する団体が「新聞・テレビ」と「雑誌」では異なっていて、与えられる情報も区別されている。
新型コロナの流行が始まってからは特に、ホワイトハウスで開かれる記者会見に参加しようと手を尽くしたが、そのたびに断られていた。もちろん、テレビやオンラインで放映されるのでそれを見ればいい。でも生なら手に入る情報量が格段に多いことも承知していた。
すぐさま名前を登録し、先方からの許可のメールを待ったが音沙汰がなかった。深夜まで待っても返事が来ないので、緊急連絡先と書いてあったケビンさんという担当者にメールを送った。翌日朝10時までに空港に到着していないといけなかったので、8時過ぎには自宅を出たいところだった。
「クレデンシャル(取材許可証)がまだ届いていないのですが、私は行ってもいいのでしょうか?」
すると、わずか10分後に返事が届いた。
「(連絡せずに)ごめんなさい。あなたはちゃんと私のリストに入っています!」
おおお、出発前の忙しいタイミングだろうに、なんといい人だ! 当日は冷たい雨と予報されていたので、ハイキング用に買っていた真っ赤なビニールがっぱを遠足気分でリュックサックに詰め、就寝した。
Powered by リゾーム?