前回の記事「NYマンハッタンを占拠する移民、「人手不足」の救世主に?」では、ニューヨーク市に大勢の南米移民が押し寄せる現状と、米国の人手不足がコロナ禍の一時的事象ではなく長期化する可能性と理由について取り上げた。今回は、そんな向かい風を追い風に変えて業績を伸ばす企業を取り上げる。キーワードは「自動化」だ。

 米国では、深刻な人手不足とそれに伴う人件費高騰に終わりが見えない。だが転んでもただでは起きずにイノベーションが起こるのが米国だ。現在、幅広い業種で「単純労働の自動化」の波が起きている。機械にできる仕事は機械に任せることで、コストの高い人材をより付加価値の高い仕事に振り向けようとする動きが加速しているのだ。

 自動化は製造業だけでなく飲食店や小売店、物流などあらゆる業界で長らく取り組まれてきた「永遠の課題」だ。深刻な人手不足の時代を迎えた今、これまで技術的には可能でも普及が進まなかった製品やサービスがいよいよ普及段階を迎えている。

 例えば、アマゾン・ドット・コムは2022年12月、かねて開発を進めてきたドローンによる宅配をテキサス州やカリフォルニア州の一部地域で始めた。クラウド大手で小売りに関連する最新技術を開発するアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)も、アマゾン・ドット・コムのレジなし店舗「アマゾンゴー」の技術を他社にも販売し、顧客を拡大している。

 AWSの小売部門を統括するスティーブ・ガーニー氏は、「(レジなしを可能にする技術の総称である)ジャスト・ウオーク・アウトは、貴重な人材資源をより価値の高い仕事に充てられるため顧客に喜ばれている。人材の有効活用だけでなく売上拡大にも貢献する。シアトルのスタジアム、ルーメン・フィールド内に入る店舗は同技術を導入し、導入前に比べて74%もスループット(レジを通過する顧客数)を向上させることに成功した」と胸を張った。

ニューヨークで全米小売業協会(NRF)が実施した展示会「リテールズ・ビッグ・ショー」の会場に常設されているレジなしのコンビニ
ニューヨークで全米小売業協会(NRF)が実施した展示会「リテールズ・ビッグ・ショー」の会場に常設されているレジなしのコンビニ

 自動化の大きな波が訪れている兆候は、23年1月初旬にラスベガスで開かれた世界最大の技術見本市「CES」や、同中旬にニューヨークで全米小売業協会(NRF)が実施した展示会「リテールズ・ビッグ・ショー」などでもみられた。

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3/14、4/5ウェビナー開催 「中国、技術覇権の行方」(全2回シリーズ)

 米中対立が深刻化する一方で、中国は先端技術の獲得にあくなき執念を燃やしています。日経ビジネスLIVEでは中国のEVと半導体の動向を深掘りするため、2人の専門家を講師に招いたウェビナーシリーズ「中国、技術覇権の行方」(全2回)を開催します。

 3月14日(火)19時からの第1回のテーマは、「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」です。知財ランドスケープCEOの山内明氏が登壇し、「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」をテーマに講演いただきます。

 4月5日(水)19時からの第2回のテーマは、「深刻化する米中半導体対立、日本企業へのインパクト」です。講師は英調査会社英オムディア(インフォーマインテリジェンス)でシニアコンサルティングディレクターを務める南川明氏です。

 各ウェビナーでは視聴者の皆様からの質問をお受けし、モデレーターも交えて議論を深めていきます。ぜひ、ご参加ください。

■開催日:3月14日(火)19:00~20:00(予定)
■テーマ:「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」
■講師:知財ランドスケープCEO 山内明氏
■モデレーター:日経ビジネス記者 薬文江

■第2回開催日:4月5日(水)19:00~20:00(予定)
■テーマ:「深刻化する米中半導体対立、日本企業へのインパクト」
■講師:英オムディア(インフォーマインテリジェンス)、シニアコンサルティングディレクター 南川明氏
■モデレーター:日経ビジネス上海支局長 佐伯真也

■会場:Zoomを使ったオンラインセミナー(原則ライブ配信)
■主催:日経ビジネス
■受講料:日経ビジネス電子版の有料会員のみ無料となります(いずれも事前登録制、先着順)。視聴希望でまだ有料会員でない方は、会員登録をした上で、参加をお申し込みください(月額2500円、初月無料)

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