2022年が明け、日本の皆さんはいかがお過ごしだろうか。ニューヨークは年末にかけて新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」の感染者が急増。その爆発ぶりに筆者もビクビクしていたが(関連記事)、年が明けたら一転、1日当たりの新規感染者数が減少傾向に転じた。年末年始に急増していた海外からの観光客が一気にいなくなったこともあり、街は落ち着きを取り戻しつつある。

マンハッタンの街角に立つ新型コロナ検査場。前回の当コラムでは検査場に数時間待ちの行列ができている様子を伝えたが、写真のように2022年1月12日現在は並んでいる人の姿はほとんどない
マンハッタンの街角に立つ新型コロナ検査場。前回の当コラムでは検査場に数時間待ちの行列ができている様子を伝えたが、写真のように2022年1月12日現在は並んでいる人の姿はほとんどない
ニューヨーク市の1日当たりの新規感染者数と7日間平均の推移(出所:ニューヨーク市の<a href="https://www1.nyc.gov/site/doh/covid/covid-19-data.page#daily" target="_blank">サイト</a>)
ニューヨーク市の1日当たりの新規感染者数と7日間平均の推移(出所:ニューヨーク市のサイト
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 一方、日本ではオミクロン型の感染拡大が続いていると聞く。

 米国では感染拡大の前にワクチンの追加接種(ブースター接種)が普及していた。米疾病対策センター(CDC)によると、南アフリカと英国で確認された感染者を調べた結果、2回のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンを接種している人はオミクロン型に対する予防効果が35%で、ブースター接種を受けていれば75%に上がることが分かったという。ワクチンを打ってさえいれば重症化リスクを低減できるというものの、日本の皆さんはまだブースター接種を受けていない方がほとんどのはず。引き続き安全に配慮してお過ごしいただきたい。

 ニューヨークに話を戻すと、年末のオミクロン型の感染拡大のさなか、年初にボストンで入っていた取材が延期になった。年初はコロナ禍でなければ通常、ラスベガスで開催される恒例のテクノロジー見本市「CES」に行くのだが、22年は目玉企業の出展が相次いでキャンセルになったことから出張は予定していなかった。

 でもボストンの取材もなくなり手持ち無沙汰になった筆者は急きょ、ラスベガス行きを決めた。同僚の新人F記者が行くというのでサポートもかねて現地入りすることにしたのだ。

 といってもF記者は英語が堪能なのでオバサン(筆者)の出る幕はほとんどない。そこで、もっともらしいアドバイスだけし(笑)、自由気ままに会場をうろつくことにした。ただ、ソニーグループの電気自動車(EV)事業参入の記事と、別の取材と時間が重なってしまった案件だけ代打で担当することにした。

 会場をうろついて見つけた「面白製品」については次回、お伝えすることとし、今回は代打で対応した個別取材の内容をお届けする。取材相手は欧州ステランティスの最高ソフトウエア責任者(CSO)のイブ・ボネフォン氏だ。 

 欧州ステランティスは22年1月初旬、「クライスラー」ブランドとして25年に初投入する電気自動車(EV)のコンセプトカー「エアフロー・コンセプト」をラスベガスで開催された世界最大のテクノロジー見本市「CES」でお披露目した。また同ブランドで28年以降に発売する全車種をEVとすることも発表した。

 ゼネラル・モーターズ(GM)もフォード・モーターもすでにEVを発売済みのため、25年に初投入するステランティス傘下のクライスラーは電動化では出遅れている。ここからどう巻き返すのか。同社で最高ソフトウエア責任者(CSO)を務めるイブ・ボネフォン氏に聞いた。

ステランティスの最高ソフトウエア責任者(CSO)を務めるイブ・ボネフォン氏
ステランティスの最高ソフトウエア責任者(CSO)を務めるイブ・ボネフォン氏

 「チーフ・ソフトウエア・オフィサー(CSO)は何をする人ですか?」

 ボネフォン氏に会うや、こんな質問を投げてみた。欧米の会社の幹部にはチーフ・○○・オフィサーという肩書きが多い。英王室を離脱したヘンリー王子が21年春、米スタートアップのチーフ・インパクト・オフィサーに就任して話題になったが、肩書にCとOが付いていても実際にどんなことをやっているか分かりにくいケースは少なくない。

 ボネフォン氏によると、CSOは21年1月の欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と仏グループPSAの統合時に誕生した新しい役職だという。任務は自動車のデジタル化・電動化に向けた戦略立案と遂行。これからのモビリティー(移動体)に必要な機能やサービスの事業戦略を立て、必要な人材を集めてチームを編成。技術開発を手掛けるとともにサービス提供に必要な「カスタマーサービス」も部門内に置く。

 ステランティスは21年12月、ソフトウエア関連の製品やサービスの売上高を30年に21年の50倍となる200億ユーロ(約2兆6200億円)とする計画を打ち出している。ボネフォン氏が統括する部門はまさにこの売り上げを実現する部隊。21年1月の発足から1年で人員は約1000人に増えたが、24年までにさらに4500人に増やすという。

「餅は餅屋」の提携で時間を買う

 同社の「逆転戦略」を図解すると下のようなイメージだ。技術開発の柱は3つある。

ステランティスのEV戦略の概略図
ステランティスのEV戦略の概略図
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 一つがコネクティドカー(つながる車)を実現する基盤ソフト「STLAブレイン」で、24年から車両に搭載する。この基盤ソフト上で動くのが、2番目の柱である車載情報システム「STLAスマートコックピット」だ。