全5559文字

 1月6日、首都ワシントンにドナルド・トランプ米大統領の支持者が集結し、連邦議会議事堂を一時占拠する暴動が起きた。米国の歴史に残る一大事。この事件は米国内でどう受け止められ、ジョー・バイデン新政権や今後の日米関係にはどのような影響を及ぼすのか。

 「さまよえる米国の民主主義」シリーズの第2回では、トランプ政権の内情に詳しいジョン・ボルトン前大統領補佐官(国家安全保障担当)に、暴動の国内での受け止めや今後の日米関係への影響、トランプ氏弾劾の行方などについて率直に聞いた。

第1回「子どもたちに誇れるか? 米国民の胸を締め付けたワシントンの暴動

米東部時間11日午前、Zoomで日経ビジネスの取材に応じたジョン・ボルトン前大統領補佐官(国家安全保障担当)

6日にトランプ支持者が起こした事件についてお考えをお聞かせください。この事件は国家安全保障の観点から米国をどのような危険に陥れたのでしょうか。

ジョン・ボルトン前大統領補佐官(以下、ボルトン氏):この事件が起きたことで、米国に顕著で長期的な危機がもたらされたとは思っていません。

 6日に起きたことは米国にとって非常に悲しく、悲惨な出来事でした。そして事件はひとえにトランプ大統領に起因すると思っています。

 暴動前に支持者に対して彼がした演説が原因です。また選挙に不正がなければ勝っていた、勝利を不正によって奪われたというウソをつき続けたことも支持者に影響を与えました。

 (取材を受けている米国時間11日)現在、彼に残された任期は9日間しかありません。私たちが今、取り組むべきことは、彼が米国に与えたダメージを修正するには何をすべきか、国を一つにするために挑戦し、前に進むにはどうすればいいかを考えることでしょう。

 ですから今回は、暴力に頼るしか方法を見いだせなかった極右の人たちが起こした事件であって、それ以上でも以下でもないと見ていますし、そうであってほしいと願っています。

 6日に起きたことは、決して許されるべきことではありません。この点は理解していただいた上で、今回の事件は議会を守る側の致命的ミスでもあったことを指摘しておきます。

 事件後のこの数日間、米国では、誰に責任があり、逆に誰には責任がなく、誰がミスをしたのかといったことばかり議論されていますが、結論を出すには時期尚早でしょう。関連する情報がまだまだ少ないからです。ただ同じことが二度と起こらないように、客観かつ独立した視点で、何が悪かったのかをしっかり精査する必要があるでしょう。

 私がここで指摘したいのは、議会のセキュリティーが壊滅的なほどに腐敗していたために、暴動が本来よりも恐ろしい脅威になってしまったことにあります。これはすぐにでも修正しなければなりません。

 一般の人たちは、新型コロナウイルスの感染拡大で議員との面会アポを取ることすら非常に難しい状況でした。なのに6日は、人々がフェンスを破って議事堂内に押し入り、議場を探してホールをふらふらとさまよっていたのです。

 こんなことは絶対に許されるべきではない。安全保障上の重大な失敗です。我々はこの出来事から多くを学ばねばなりません。

暴動激化は「トランプ氏の願いだと思ったから」

一部のトランプ支持者の暴力がなぜここまで激しくなってしまったのでしょうか。6日の現場にいたトランプ支持者の知人に聞いたところ、暴動は寝耳に水で、あくまで平和的な抗議運動をするために議事堂へ向かったと言っていました。

ボルトン氏:トランプ大統領にそう奨励されたと思ったからでしょう。

 トランプ氏や(トランプ氏の顧問弁護士である)ルディ・ジュリアーニ氏が暴動前にした演説を聞きましたか? 「戦闘による裁判」などという発言もありました。

 暴動を起こした人たちがやったことを決して正当化はできませんが、彼らがそう行動したのは、トランプ氏が彼らにそうしてほしいと願っていると思ったからなのです。

 また同時に私は、今回起きた脅威を拡大解釈すべきではないとも強く思っています。こうした激しい暴力を伴うデモは、極右だけでなく極左からも見られます。不要に政府の脅威に仕立て上げるのはよくありません。

 トランプ氏もなぜそんな演説をしたかというと、単に議会の議論を引き延ばせば、その間に選挙の敗北を回避するための手立てを見つけられるかもしれないと考えたからでしょう。非常に分かりやすい論理だったのだと思います。

では現在のトランプ氏の頭の中には何があるのでしょう。次のステップは何だと思いますか。

ボルトン氏:彼が取る次のステップは……。