6日に起きた暴動で、議事堂の壁によじ登るトランプ氏支持者たち(写真:AP/アフロ)

 1月6日、首都ワシントンにドナルド・トランプ米大統領の支持者が集結し、連邦議会議事堂を一時占拠する暴動が起きた。以前から懸念されていたことが現実になった格好だが、全米に生中継されたその様子は米大統領選の混乱と新型コロナウイルス感染拡大に長く苦しんできた米国民に追い打ちをかける。

 さまよえる米国の民主主義はどこへ向かうのか。

 「もしトランプが負けたら? 暴動が起きるだけだ」──。

 カリフォルニア州でドナルド・トランプ氏支持の若手グループをまとめていた30代後半の知人男性が、こんな話をしていたのは2020年初夏のことだった。

 「えーっ、本当に?」と筆者が口走ると、「この選挙は社会主義者によって操られているんだ。トランプは、はめられているんだよ。暴動を起こさなければ民主主義が崩壊してしまう」と彼は言っていた。

 新型コロナウイルスについても、こんな話を披露した。

 「CDC(米疾病対策センター)が発表している死者数はウソなんだ。病院は新型コロナで死亡したと報告すれば政府からおカネをもらえるから、別の病気で亡くなった人も新型コロナで死亡したことにしているんだ」

 これを聞いて、心が締め付けられた。

 20年4月に感染爆発が起きたニューヨークで、医師や看護師などの医療従事者や葬儀関係者などを取材していたからだ。医療崩壊の実態は、地獄絵図そのものだった。医療従事者や葬儀関係者の苦労は、想像するだけで胸が締め付けられて息苦しい。

 本気で言っているのだろうか。

 正直にそうと聞くと、「本当だよ。米国のメディアは間違った報道しかしないから。数字を悪く言うことでトランプの失政だと国民に信じ込ませたいんだ」と彼は言った。

トランプ氏支持者が暴徒化、緊迫の6日午後

 日本でも報道されているように、米東部時間の21年1月6日、首都ワシントンでトランプ氏支持者が連邦議会の議事堂を占拠する暴動が起きた。

 支持者の一部は警察当局との激しい衝突の末、連邦議会の議事堂内に押し入った。議事堂前の階段は人であふれていたため、壁をよじ登って入り口に近づこうとする者までいた。

 同日午後、地元メディアは暴動の中継で一色になった。筆者も午後は別件の取材でニューヨークの街に繰り出す計画だったが、テレビにくぎ付けになって出られなかった。

 議事堂内に押し入った暴徒の中には、議長席に座ったり、民主党のナンシー・ペロシ下院議長の部屋に押し入り、机の上に足を上げて記念撮影をしたりする者もいた。

上院議場前で中に突入しようとするトランプ支持者(写真:AP/アフロ)

 議事堂内の混乱の中で1人の女性が撃たれ、病院に運ばれたが死亡が確認された。傷ついた女性が議事堂から運ばれていく姿もテレビで報道された。

 トランプ氏が全米放送のテレビなどで全国民に向けたメッセージを発信しなかったことから、大手ネットワークで生放送中のアンカーが「国の一大事だというのに現時点でも国のトップである大統領が何もしないのはどういうことか」と怒りをあらわにする場面も見られた。

 議事堂は支持者による数時間の占拠の後、警察当局によって奪回された。6日夜、ジョー・バイデン氏を大統領として承認する上下両院合同会議が再開された。

 トランプ氏は、ツイッターなどのSNS(交流サイト)で支持者に「平和的であるように」と呼び掛ける一方、大統領選の不当性を改めて訴えた。だが後者の内容を含む動画やテキストについてはツイッターやフェイスブックから「規約違反」として削除されている。

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